無償業務委託は違法?下請法違反の回避方法やリスク対策、罰則を解説
無償業務委託とは、業務を委託する側が報酬を支払わずに、委託された側が業務を行う契約のことです。無償業務委託は、インターンシップやボランティアなどの場合に行われることがありますが、下請法に違反する可能性が高い行為です。
下請法とは、下請け業者や派遣社員などの不利益を防止するための法律で、報酬の不払いや不当な減額などを禁止しています。無償業務委託は、報酬を支払わないため、この下請法に反すると考えられます。
もし、無償業務委託が下請法違反と判断された場合には、厳しい罰則を課せられるリスクがあるため、注意が必要です。
そこで今回は、無償業務委託の違法行為について、下請法違反を回避するための方法や、リスクへの対策、違反した場合の罰則などを詳しく解説します。インターンシップなどで無償の業務委託を行う予定のある方や、すでに行っている企業の方は、ぜひ参考にしてください。
無償業務委託とは?無償業務委託が問題となる理由
無償業務委託とは、業務を委託する側が受託する側に対して報酬を支払わない業務委託契約のことです。
無償業務委託が問題となる理由は、以下のような点が挙げられます。
商法や民法に反する可能性がある
商法では、商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができると定められています。
民法では、受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができないと定められていますが、これは受任者が自発的に無償で業務を行う場合に限られたものです。
無償業務委託は、受託者が報酬を受け取らないことに同意しているかどうかが不明確であるため、契約の成立や効力に疑問が生じる可能性があります。
税法上の寄付とみなされる可能性がある
無償で業務を行うことは、委託者に対する寄付と同様の経済的効果をもたらすため、税法上は寄付とみなされる場合があります。
寄付には、所得税や法人税の控除の対象となるものとならないものがありますが、無償業務委託は、一般的には控除の対象とならない寄付として扱われる可能性が高いです。また、寄付を受けた委託者は、寄付金の額に応じて所得税や法人税の課税対象となる場合があります。
労働法上の問題を引き起こす可能性がある
無償業務委託は、形式上は業務委託契約であっても、実態としては雇用契約による労働者と同じ働き方をする場合があります。このようなケースを「偽装請負」と呼びますが、労働法の適用を逃れるために行われる不正な契約の1つとして、処罰の対象となる行為です。
偽装請負に当たると、委託者は、受託者に対して最低賃金や残業代などの労働条件を遵守する義務や、社会保険料を負担する義務などを負うことになります。また、受託者は、労災保険や失業保険などの労働保険の給付を受ける権利を主張することが可能です。
無償業務委託の法的な問題点
無償業務委託とは、業務を委託する側が受託する側に対して報酬を支払わない業務委託契約のことです。
無償業務委託には法的な問題点がいくつかあるため、以下で主なものを挙げてみましょう。
無償業務委託が下請法に違反する可能性
無償業務委託は、下請法に違反する可能性があります。下請法は、親事業者と下請事業者の間の取引において、下請事業者の利益を保護するために、親事業者に対して禁止行為や義務を定める法律です。
無償業務委託は、下請法の定める下請代金の減額の禁止や支払遅延の禁止などに抵触する可能性があります。また、無償業務委託は、下請法の定める書面の交付義務や書類の作成・保存義務などを遵守することが困難になる可能性もあります。
無償業務委託が独占禁止法に違反する可能性
無償業務委託は、独占禁止法に違反する可能性があります。独占禁止法は、公正で自由な競争を確保するために、企業間の不公正な取引方法や優越的地位の濫用を禁止する法律です。
無償業務委託は、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対して不当に不利益を与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題となりやすいです。特に、無償業務委託において、知的財産権の譲渡や使用許諾に関する対価が無償であったり、不当に低かったりする場合は、独占禁止法の違反となる可能性が高いでしょう。
無償業務委託が知的財産権の侵害になる可能性
無償業務委託は、知的財産権の侵害となる可能性があります。無償業務委託において、受託者が提供した役務の内容に知的財産権が発生する場合があります。
例えば、著作権や特許権などです。この場合、委託者が受託者に対して、無償で知的財産権を譲渡させたり、使用許諾させたりすることは、受託者の知的財産権を侵害することになります。また、委託者が受託者の知的財産権を無断で使用したり、第三者に譲渡したり、使用許諾したりすることも、知的財産権の侵害となる行為です。
委託企業の無償業務委託のリスクと罰則
無償業務委託とは、業務を委託する側が受託する側に対して報酬を支払わない業務委託契約のことです。無償業務委託は、法的にも経済的にもリスクが高い契約形態です。
以下に、委託企業が無償業務委託を行った場合に想定されるリスクと罰則を挙げます。
残業代や社会保険料の支払い義務
無償業務委託は、形式上は業務委託契約であっても、実態としては雇用契約による労働者と同じ働き方をする場合があります。このような場合は「偽装請負」となり、労働法の適用を逃れるために行われる不正な契約として問題視されます。
偽装請負に当たると、委託者は、受託者に対して最低賃金や残業代などの労働条件を遵守する義務や、社会保険料を負担する義務などを負うことになるため、十分に注意が必要です。
刑事罰や行政処分
無償業務委託は、商法や民法に反する可能性があります。
商法では、商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができると定められています。
民法では、受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができないと定められていますが、これは受任者が自発的に無償で業務を行う場合のみ認められるケースです。
無償業務委託は、受託者が報酬を受け取らないことに同意しているかどうかが不明確であるため、契約の成立や効力に疑問が生じる可能性があります。また、無償業務委託は、税法上の寄付とみなされる可能性もあります。
無償で業務を行うことは、委託者に対する寄付と同様の経済的効果をもたらすため、税法上は寄付とみなされる可能性のある行為です。寄付には、所得税や法人税の控除の対象となるものとならないものがありますが、無償業務委託は、一般的には控除の対象とならない寄付として扱われる可能性が高いと言えるでしょう。
また、寄付を受けた委託者は、寄付金の額に応じて所得税や法人税の課税対象となる場合もあります。これらの法律や税法に違反した場合、委託者は、刑事罰や行政処分を受ける可能性が高いでしょう。
損害賠償請求や権利回復請求
無償業務委託は、労働法上の問題を引き起こす可能性があります。
例えば、無償業務委託において、受託者が提供した役務の内容に知的財産権である著作権や特許権などが発生する場合です。この場合、委託者が受託者に対して、無償で知的財産権を譲渡させたり、使用許諾させたりすることは、受託者の知的財産権を侵害することになります。また、委託者が受託者の知的財産権を無断で使用したり、第三者に譲渡したり、使用許諾したりすることも、知的財産権の侵害に当たる行為です。
これらの知的財産権の侵害によって、受託者は、委託者に対して損害賠償請求や権利回復請求を行うことができます。
委託企業の無償業務委託を回避する方法と対策
無償業務委託とは、業務を委託する側が受託する側に対して報酬を支払わない業務委託契約のことです。
無償業務委託は、法律的にも経済的にもリスクが高い契約形態です。委託企業が無償業務委託を回避する方法と対策について、以下のような点が挙げられます。
適正な対価を支払うこと
無償業務委託は、報酬を支払わないことで、商法や民法に反する可能性があります。また、税法上の寄付とみなされる可能性もあります。そこで、無償業務委託を行わないためには、受託者に対して適正な対価を支払うことが必要です。
適正な対価とは、市場価格や業界標準に照らして相当と認められる金額のことです。適正な対価を支払うことで、受託者の権利や利益を尊重し、契約の成立や効力を確保することができます。
業務委託契約書を作成すること
無償業務委託は、契約内容が不明確であることが多く、偽装請負や労働者派遣に該当する可能性があります。無償業務委託を回避するためには、業務委託契約書を作成することが必要です。
業務委託契約書とは、業務の内容や範囲、報酬の額や支払い方法、知的財産権の取扱いなどを明記した書面のことです。業務委託契約書を作成することで、双方の権利義務を明確にし、契約の実態に合致した契約形態を選択することができます。
指揮命令関係を避けること
無償業務委託は、指揮命令関係があることで、労働法上の問題や知的財産権の侵害になる可能性があります。指揮命令関係を避けるためには、以下のような点に注意する必要があります。
受託者に対して、業務の目的や成果物の要件を提示するだけにとどめ、具体的な業務の方法や手順、順序、時間などについては自由に任せること。
受託者に対して、業務に必要な機材や資材、設備などを提供しないこと。受託者が自ら用意することを契約書に明記すること。
受託者に対して、業務の進捗や品質については適宜確認する程度にとどめ、細かくチェックや修正を求めないこと。
受託者に対して、業務に関する教育や研修を行わないこと。受託者が自ら必要なスキルや知識を習得することを契約書に明記すること。
受託者に対して、業務外の活動や他の仕事の受注について制限や干渉をしないこと。受託者が自由に他の仕事を行うことを契約書に明記すること。
上記のポイントを押さえて、以下で紹介する業務委託契約書のテンプレートをご活用ください。
業務委託契約には契約書の作成が必須
業務委託契約では、企業と委託先との間で業務委託契約を結ぶのが一般的です。そして、業務委託契約を交わす際は、必ず業務委託契約書を作成しましょう。
業務委託契約書を作成すべき理由は、以下のとおりです。
トラブルを回避するため
業務委託とは、発注元の企業が業務の一部または全部を、社外の業者やフリーランスなどに委託することです。その際に、委託する業務を明確にしておかなければ、委託先が思うような仕事ができない可能性があります。
もし納品された製品が、注文通りのものでなかったとしても、契約書がなければ指摘できません。また納期についても契約書に記載しておかなければ、約束通りに納品されない可能性もあるでしょう。
このようなトラブルを避けるためにも、契約書に業務内容を明確に記し、納期や支払いに関する条件等を確認することが非常に重要です。
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信頼関係を構築するため
業務委託契約書の作成は、業務を委託する側とされる側の両者が、安心して業務を遂行するためにも重要な役割を果たします。
委託側(発注元)としては、委託する業務内容を明記することで、業務の進捗状況を把握しながら確認できます。一方業務を受託した側(発注先)も、報酬金額や支払い方法が明確であるため、業務に集中できるのがメリットです。
このように、契約書の作成によって両者に信頼関係が生まれ、より円滑に業務を遂行できるため、契約書の作成は必須といえるでしょう。
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業務委託契約書の作成方法と記載すべき13項目
業務委託契約書の作成にあたり、記載すべき13項目は次の通りです。
- 委託業務の内容
- 委託料(報酬額)
- 支払条件、支払時期、支払い方法など
- 成果物の権利
- 再委託の可否
- 秘密保持に関する条項
- 反社会的勢力の排除
- 禁止事項の詳細
- 契約解除の条件
- 損害賠償について
- 契約期間について
- 所轄の裁判所について
- その他の事項
それぞれ解説します。
1.委託業務の内容
まず、業務委託する業務の内容や、成果物についての詳細を明記しましょう。この内容によって、次に紹介する「業務委託契約の種類」が変わるため、委託内容は非常に重要な項目です。
2.委託料(報酬額)
委託料とは、委託先に支払う報酬です。報酬額がいくらなのか、税抜きと税込み金額を明記しましょう。
3.支払条件、支払時期、支払い方法など
業務委託契約書に記載するのは、委託金額とともに支払い条件や、時期、方法なども明記します。請負契約では、契約書に記載した通りの製品を、納期までに納品しなかった場合、契約不履行となり報酬を支払わないケースがあるため、しっかりと記載しましょう。
4.成果物の権利
業務委託契約では、委託した業務が成果物の納品を目的としていた場合に、その成果物の権利が発注先から発注元に移るのか否かも記載しましょう。このようなケースでは、著作権や商標権などが絡む取引となるため、事前に弁護士などに相談した上で契約書を作成すると安心です。
5.再委託の可否
業務委託では、委託した仕事をさらに二次下請けや三次下請けに回すこともあります。このようなケースでは自社の機密事項などが漏れやすくなるリスクがあるため、禁止する場合には、契約書にしっかりと明記しておきましょう。
6.秘密保持に関する条項
業務委託契約において、最も注意したい項目の1つが、この「秘密保持」に関する条項です。近年は個人情報の管理や企業のコンプライアンスを重視する傾向が強く、自社だけでなく、顧客情報などの取り扱いにも十分な注意が必要です。
もし委託する業務に自社の機密事項や取引先、顧客の情報がある場合には、別途秘密保持契約を交わし、万一に備える必要があります。
7.反社会的勢力の排除
こちらも企業のコンプライアンスに違反しないために注意すべき項目です。自社はもちろんのこと、相手先にも反社会的勢力とのかかわりがないか確認しましょう。
8.禁止事項の詳細
業務委託契約を結ぶ際に、上記以外の禁止事項があれば記載しましょう。できるだけ詳細に明記することが大切です。
9.契約解除の条件
契約書に記載した内容に違反があった場合などに、契約を解除できる条件を記載しておきます。万一の際に自社を守るための切り札となる条項ですので、あらゆるトラブルを想定して内容を決めましょう。また、契約解除は委託先にとっても一番厳しい条件となるため、常識の範囲内で設定すること。また、契約先と内容をすり合わせながら決めることが重要です。
10.損害賠償について
損害賠償についての項目も、万一の際に有効です。成果物の不備や欠陥、納期の遅れが許されない業務委託契約の場合には、損害賠償に関する条項を設けておきましょう。
11.契約期間について
契約期間を定めた取引する場合には、しっかりとその期間を明記します。契約期間の詳細によっては、契約書にかかる印紙税額が変わるため、こちらにも留意しながら記載しましょう。
12.所轄の裁判所について
業務委託契約書には、万一のトラブルで裁判となった場合に、所轄の裁判所がどこになるかを明記することが大切です。
特に遠方の業者や個人と契約を結ぶ際には、トラブルが発生した際の所轄の裁判所を明記しておかなければ「両者の中間の裁判所」を指定されるケースもあります。
そこで、あらかじめ発注者の最寄りの裁判所を明記しておき、委託先の合意を得ておきましょう。
実際に裁判に発展するトラブルは少ないものの、裁判所を記載しておくことがトラブルの抑止にも繋がります。
13.その他の事項
その他の事項には、上記以外で記載すべき内容があれば明記しましょう。
業務委託契約書テンプレート【すぐに使えるひな形】
ここまで業務委託契約書の作成方法や注意点について解説してきました。業務を委託する場合は下記のテンプレートを参考に業務委託契約書を作成してみてください。
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9.ランサーズエージェント
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10.ITプロパートナーズ
▲出典:ITプロパートナーズ
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11.クラウドテック
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