フリーランス新法と下請法の違いとは?重複事項や適用事例などわかりやすく解説
2024年に施行された「フリーランス新法」ですが、似たような法律に「下請法」という法律があり、違いがわからず困惑している人もいるでしょう。フリーランスや企業と取引する際、両法について理解しておかなければ、発注事業者に法的リスクが科せられるため注意が必要です。
本記事では、フリーランス新法と下請法の違いや重複ポイント、優先的に対応すべきことまでわかりやすく解説します。具体的なケーススタディや事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
※本記事ではおもに、公正取引委員会の公式サイトをもとに作成。
フリーランス新法と下請法の違い
フリーランス新法も下請法も、受注者と発注者との取引の公正化を目的とした法律です。ただし以下の表のように、若干の相違点があります。
項目 | フリーランス新法 | 下請法 |
受託者 | 個人事業主 (従業員なし・自ら業務を行う) | 法人・個人事業主 |
発注者 | 企業・個人事業主 (規模不問) | 一定の要件を満たす企業 (例:資本金1,000万円超) |
対象取引・ 委託業務の内容 | 例:
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次の章で詳しく解説していきます。
フリーランス新法とは
フリーランス新法は、個人で働くフリーランスの保護を目的とした新しい法律です。業務委託契約で働くフリーランスや個人事業主などを対象に、不当な取引やハラスメントを防ぐためのルールが設けられました。
フリーランス新法の場合、発注者の規模は問わず適用されます。大企業・中小企業、ベンチャー企業、個人事業主であっても、フリーランスに業務を委託しているのであればフリーランス新法の対象です。
出典:公正取引委員会_フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組
この法律の場合、業務を請け負う受託者は「従業員を雇用せず、自ら業務を行う個人事業主」となっています。そのため、フリーランスが自作の作品を販売する取引は対象外です。
下請法とは
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、下請事業者の利益保護を目的とした法律です。下請法では、適用対象の下請範囲を「取引当事者の資本金」と「取引の内容」の両面から規定しています。
下記の画像の通り、一定以上の資本金を持つ企業が、下請事業者に業務を委託する場合に適用される仕組みです。取引内容によっても資本金の範囲が異なるため注意しましょう。
たとえば資本金3,000万円の企業が、資本金500万円の会社に動画編集を外注している場合、「情報成果物の作成」(成果物の動画)に該当する形です。そのためこのケースでは、下請法の保護対象となります。
フリーランス新法と下請法の重複事項
両法には異なる点がある一方で、重複する部分も少なくありません。たとえば、以下のような点で共通しています。
- 書面または電磁的記録による契約事項の明示
- 報酬の支払期日の遵守
- 一方的な契約解除や買いたたきの禁止
- ハラスメントや不当な要求の禁止
下請法の場合、「物品等を受領した日から起算して60日以内の支払い」が義務化されています。フリーランス新法も、原則「発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内に報酬を支払う」と定めています。一方的かつ不当な取引や、支払いの遅延はどちらの法律でも禁止です。フリーランスや下請事業者と良好な関係を築いていきましょう。
フリーランス新法と下請法で優先して対応すべきこと3つ
以下では、フリーランス新法と下請法で優先して対応すべきことについて解説していきます。
1. 契約書や発注書を再確認する
まず、契約書や発注書といった書類を見直していきましょう。フリーランス新法も下請法も、契約内容の明示を義務にしており、曖昧な表現や記載漏れは違法と判断される恐れがあります。そのため以下のような内容を、できるだけ明確に記載します。
- 報酬金額
- 納期
- 業務内容
- 成果物の範囲
- 修正対応の条件
- 支払い方法
口頭だけで取引や契約を進めず、必ず書面または電子契約の形式で取引内容を文書化しておきましょう。
▼関連記事:フリー ランスとの業務委託契約書の書き方と無料のテンプレートを紹介
2. 報酬の支払いフローを見直す
報酬の支払いは、法令対応の中でも特に重要なポイントです。慣例的に遅延していた支払いフローは、改善が求められます。
まずは現行の報酬支払いフローを可視化し、契約から支払までの各ステップを洗い出しましょう。フリーランス新法や下請法と照らし合わし、不備や法的リスクに該当しそうな箇所を特定します。契約書や発注書のチェックリストやテンプレートを用意し、誤りや抜け漏れを防ぐルールを設けておくのも効果的です。
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▼【チェックリストつき!】フリーランス・副業人材との業務委託契約書作成ガイド
▼【ポイント解説付き】業務委託に必要な4つの契約書テンプレート
必要に応じてタスク管理ツールや請求書発行システムなどを導入し、自然と法令が遵守される仕組みに整えていきましょう。
3. 社内体制を整備する
法律への対応は、一部の担当者だけで完結するものではありません。法務や経理、調達など、各関係部門が連携し、全社的な法令遵守の体制整備が必須です。各部署が同じ認識を持ち、正しく運用できるようにしていきます。
たとえば業務委託契約を遂行する人事担当者には、フリーランス新法に関する研修を実施します。下請事業者と直接やり取りしている営業担当者には、下請法に関する勉強会を実施し、社内コンプライアンスを強化させていきましょう。
フリーランス新法と下請法に違反した場合のリスク
ここでは、フリーランス新法と下請法に違反した場合のリスクについて解説します。
企業イメージがダウンする
法律違反の発覚は、企業に大きなダメージを与えます。特に情報の拡散力が強い現在では、ひとたび悪評が立つとあっという間に広がります。
「ハラスメント行為をされた」「報酬の支払いが常習的に遅れている」といったトラブルが明るみに出ると、SNSでの炎上やメディア報道に繋がる可能性もあります。取引先や株主からの評価も下がり、新規ビジネス獲得や資金調達にも悪影響となるでしょう。
社内でも「うちの会社はルールを守らない」という不信感が広がり、従業員の士気も低下します。こうした評判の低下は、信頼回復に長い時間とコストを要するため、未然の対応が不可欠です。
人材獲得や取引に悪影響を及ぼす
企業の対応がずさんだと、フリーランスや取引先は自然とその企業から離れます。特にフリーランスの場合、「契約内容が不明確」「支払いが遅い」といった悪評が広がれば、優秀な人材ほど他社に流れてしまうでしょう。
またこうした姿勢は、取引先企業やビジネスパートナーにも伝わるかもしれません。結果、営業機会の損失や事業拡大のブレーキに繋がることもあるため注意が必要です。
法的リスクが高まる
フリーランス新法や下請法に違反した場合、行政指導や改善勧告の対象となります。特に下請法では、公正取引委員会や中小企業庁による定期的な調査が実施されます。報酬の減額や支払い遅延など、違反が確認されれば勧告・公表といった厳しい対応が取られます。
こうした法的リスクに備えるには、契約や発注フローの見直しなどが重要です。定期的にリーガルチェックを外部の専門家に依頼するのもいいでしょう。
フリーランス新法と下請法が適用されたケーススタディ
ここでは、フリーランス新法・下請法適用のケーススタディをご紹介します。
フリーランスにWeb制作を委託しているケース
個人事業主(フリーランス)のWebデザイナーにランディングページ制作やバナー作成を依頼している場合は、フリーランス新法が適用されます。発注者は契約締結時に、報酬額や納期などを明記した書面を交付しなければなりません。
また、「追加修正は〜回まで」「対応時間は1日〜時間まで」といった点も、契約段階で明確にしておくと後々のトラブルを避けやすくなります。納品後の支払いについても、検収の有無や支払い期日を事前に定めておき、契約書や発注書に明記しておきましょう。
▼関連記事:業務委託契約書はどちらが作成する?法律や注意点、記載すべき13項目と作り方を解説
月額契約しているライターに業務を依頼しているケース
記事作成を月額固定で委託している場合、その業務を請け負うライターが個人事業主(フリーランス)であればフリーランス新法の対象です。
ただし業務を請け負うライターが外部企業の社員で、企業を通じて契約・支払いを行う場合は法人との取引に該当するでしょう。そのためこのケースでは、フリーランス新法の対象から外れます。また発注先が小規模法人で、自社の資本金が一定額を超える場合、下請法の適用対象となる可能性があるため注意しましょう。
個人経営の会社に動画編集を委託しているケース
次に、動画編集を代行する合同会社や株式会社に、業務を発注しているケースを見ていきましょう。この場合、親事業者(自社)の資本金が1,000万円を超えていれば、「下請法」が適用される可能性が高いです。
フリーランス新法が適用されるのは、その事業者が法人格を持たず実態として「フリーランス」である場合です。たとえば事業名や屋号を使って活動しながらも、個人事業主として業務を請け負っている場合は法人格がないため、フリーランス新法の保護対象となります。
ポイントは「法人格の有無」と「取引の実態」です。名称に惑わされず、契約相手の属性や契約条件を確認し、フリーランス新法・下請法のどちらに該当するのかを判断していきましょう。
フリーランス新法と下請法で誤解しやすいポイント
以下では、フリーランス新法と下請法で誤解しやすいポイントについて解説していきます。
業務委託契約を締結しているから法律は気にしなくてもいい?
業務委託契約を締結しているからといって、法律を気にしなくていいわけではありません。業務委託契約は、フリーランス新法が適用される契約形態です。
契約書を取り交わしていれば形式的には整っているように見えますが、契約内容が法律に則っていなければ意味がありません。たとえば、契約内容の明示義務や、報酬支払いの期日といったルールが守られていない場合、法律違反となります。
従って「契約書がある=大丈夫」ではなく、契約書の中身や運用の実態が「法令に準拠しているかどうか」を確認することが重要です。
法人=下請法、個人=フリーランス新法になるの?
必ずしも「法人=下請法」「個人=フリーランス新法」とはなりません。どちらの法律が適用されるかは、取引先の「属性・業務内容・資本金」などが判断基準となります。
フリーランス新法は、基本的に個人で業務を請け負うフリーランス(従業員を使用しない者)に対して適用されます。一方、下請法は「親事業者(発注元)の資本金が一定額を超える」かつ「製造委託やソフトウェア開発などを発注する」場合に適用される法律です。
そのため「発注元の資本金」や「委託業務の内容」など、多面的に「どの法律が適用されるか」を判断していく必要があります。
副業ワーカーはフリーランス新法が適用される?
副業ワーカーも、フリーランス新法の保護対象です。たとえば会社員が本業とは別に、副業としてライターや動画編集の仕事を請けている場合、その契約にはフリーランス新法が適用されます。
本業の有無にかかわらず、副業の仕事に関しては独立した事業者として扱われるため、発注者には契約内容の明示や、報酬の支払い義務が発生します。小さな案件でも軽視せず、フリーランス新法に則った契約・取引をしていきましょう。
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フリーランス新法と下請法は、企業がフリーランスや小規模法人と取引する際に無視できない重要なルールです。
法令違反は企業の信頼低下に繋がるため、正しい知識の把握と対応が欠かせません。契約書や社内のコンプライアンス体制など、問題が発生する前に見直していきましょう。
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