【企業向け】準委任契約の時間精算は違法?業務委託の勤怠管理のやり方と注意点を解説
業務委託とは、自分の専門性やスキルを活かして、依頼者から仕事を受ける契約形態です。業務委託には、主に請負契約と準委任契約があります。準委任契約とは、依頼者が仕事の内容や方法を指示したり、報告や連絡を求めたりする場合に成立する契約形態です。
準委任契約では、依頼者が業務の遂行に関与することになるため、労働者として扱われる可能性があります。その場合、労働基準法や社会保険制度の対象となり、最低賃金や残業代などの権利を主張できるようになります。このようなケースで必要となる概念が、時間精算です。
そこで今回は、準委任契約における時間精算について、業務委託の勤怠管理のやり方と注意点を解説します。準委任契約を結ぶ企業の方は、ぜひ参考にしてください。
準委任契約とは?特徴とメリット・デメリットを簡単に解説
準委任契約とは、特定の業務を遂行することを定めた業務委託契約の一種です。
準委任契約は、仕事を完成させる義務はなく、業務の遂行が目的です。準委任契約は、履行割合型と成果完成型の2種類に分かれます。
準委任契約の特徴としては、以下のようなものがあります。
- 発注者に指揮命令権がないこと
- 契約期間の制限がないこと
- 善管注意義務があること
- 債務不履行責任や契約不適合責任がないこと
- 任意解除が可能なこと
準委任契約で業務を委託する側のメリットには、以下のようなものがあります。
- 専門業務をプロに委託できる
- 工程ごとの依頼がしやすい
- コスト管理がしやすい
一方、準委任契約のデメリットでは、以下のようなものがあります。
- 人材との長期的な関係を構築しにくいこと
- 仕事内容を指揮命令できないこと
- 契約書の印紙税がかかる場合があること
- 偽装請負のトラブルに注意しなければならないこと
準委任契約の時間精算は違法か?
準委任契約における時間精算とは?
時間精算とは、準委任契約において、稼働時間に範囲を設けて基本単価を決め、稼働時間の範囲を上回れば増額、下回れば減額と、支払金額を計算することです。
また、稼働時間に設けられた幅を精算幅と言います。 精算幅は準委任契約を結ぶときによく使われますので覚えておきましょう。
一般的に多く使われている精算幅は140~160時間です。 ただし、企業やプロジェクトごとに精算幅が異なるため、160~200時間や140~200時間などで契約するケースもあります。
準委任契約の時間精算は違法?
準委任契約の時間精算が違法かどうかは、一概には言えません。
契約の内容や実態によって異なりますが、以下のような場合には、偽装請負や事実上の派遣契約とみなされる可能性があるでしょう。
- 委託者が受託者の業務工数や作業時間を把握して、そこから委任料を請求する場合
- 委託者が受託者のエンジニアを指名して、その人物に対して作業指示や管理を行う場合
上記の場合には、労働局から是正勧告や行政処分を受ける恐れがあります。また、受託者のエンジニアも、委託者に対して労働者としての権利を主張することが可能です。
したがって、準委任契約を結ぶ際には、契約書の内容や実際の業務委託の方法に注意する必要があります。また、契約書だけではなく、実際の業務委託の方法にも注意が必要です。
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準委任契約における時間精算の法的な問題点
時間精算とは、一定期間(通常は1ヶ月)の労働時間を合計し、その平均を基準にして賃金を支払う制度です。この制度は、労働者の勤務時間の柔軟性を高めるというメリットがありますが、一方で、労働基準法や裁判例によって違法とされる場合があります。
時間精算が違法とされる理由
時間精算が違法とされる理由の一つは、労働基準法第24条に定められた「全額支払いの原則」に反するからです。この原則は、労働者に対してその実労働時間に応じた賃金を支払わなければならないというもので、1分単位での勤怠管理が義務付けられています。したがって、15分単位や30分単位などで時間の切り捨てや切り上げを行うことは違法です。また、遅刻や早退の時間も切り捨てや切り上げを行うことはできません。
時間精算が違法とされる理由のもう一つは、労働基準法第32条に定められた「36協定」に反するからです。この協定は、労働者の健康や生活を守るために、月あたりの時間外労働時間や年間の休日出勤日数に上限を設けるもので、労働者代表と雇用者が協定書を締結しなければなりません。したがって、36協定を締結せずに時間外労働や休日出勤を行うことは違法です。また、36協定を締結していても、その内容に従わない場合も違法です。
時間精算が適法とされる条件と例外
時間精算が適法とされる条件は「全額支払いの原則」と「36協定」の両方に従うことです。具体的には、以下のような要件を満たす必要があります。
- 労働者の実労働時間を1分単位で正確に記録し、その記録を保存すること。
- 労働者に対してその実労働時間に応じた賃金(基本給+時間外手当+休日出勤手当など)を支払うこと。
- 労働者代表と雇用者が36協定を締結し、その内容に従って時間外労働や休日出勤を行うこと。
- 労働者に対して、時間精算制度の内容や労働時間の計算方法を明確に説明し、その同意を得ること。
時間精算が適法とされる例外は「フレックスタイム制」や「変形労働時間制」などの特別な労働時間制度です。これらの制度は、労働基準法で規定されており、一定期間内の労働時間の合計を基準にして賃金を支払うことが認められています。
ただし、これらの制度を適用する場合も、全額支払いの原則や36協定に従うことは必要です。また、これらの制度を適用するためには、労働者代表と雇用者が協定書を締結することや、労働基準監督署に届出することなどの手続きが必要です。
業務委託の勤怠管理のやり方と注意点
業務委託とは、企業が外部の個人事業主やフリーランスに業務を委託する契約形態です。
業務委託には、成果物を納品する請負契約と、一定の業務を遂行する委任契約(準委任契約)があります。
業務委託は、雇用契約と違って、企業と個人事業主は対等な立場であり、企業には指揮命令権がありません。そのため、業務委託における勤怠管理は、以下の点に注意する必要があります。
- 企業は、個人事業主に対して、作業開始時刻や作業終了時刻などの勤怠を指定することはできません。そのため、個人事業主は自らの裁量で働くことができることを理解しましょう。
- 企業は、個人事業主に対して、作業場所や方法などの指示を出すこともできません。そのため、個人事業主は自らの責任で作業を進めることができることを理解しましょう。
- 企業は、個人事業主に対して、社内規則や福利厚生などの適用を求めることもできません。そのため、個人事業主は労働法の保護を受けることができません。
- 企業は、個人事業主に対して、報酬の計算方法や支払い方法などを事前に明確にする必要があります。また、契約種類によって報酬の算出方法が異なるため、契約書にしっかりと明記することが重要です。
さらに、企業は、偽装請負という違法行為に注意する必要があります。偽装請負とは、実質的に雇用契約と同等の関係にあるにもかかわらず、業務委託契約の形でフリーランス・個人事業主などに仕事をさせることです。
偽装請負は、労働基準法や職業安定法などに違反する行為であり、罰金や懲役などの刑事罰や社会的な信用失墜などのリスクがあります。偽装請負とみなされる可能性のあるケースは以下のようなものです。
- 企業が個人事業主に対して、作業場所や時間を拘束している場合
- 企業が個人事業主に対して、作業内容や方法に関する細かい指示を出している場合
- 企業が個人事業主に対して、社内規則や福利厚生などを適用している場合
企業が業務委託を行う際は、上記の点にくれぐれも注意しましょう。
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準委任契約に業務委託契約書の作成が必要な理由を解説
準委任契約などの業務委託契約を交わす際は、必ず業務委託契約書を作成しましょう。
業務委託契約書を作成すべき理由は、以下のとおりです。
1.トラブルを回避するため
業務委託とは、発注元の企業が業務の一部または全部を、社外の業者やフリーランスなどに委託することです。その際に、委託する業務を明確にしておかなければ、委託先が思うような仕事ができない可能性があります。
もし納品された製品が、注文通りのものでなかったとしても、契約書がなければ指摘できません。また納期についても契約書に記載しておかなければ、約束通りに納品されない可能性もあるでしょう。
このようなトラブルを避けるためにも、契約書に業務内容を明確に記し、納期や支払いに関する条件等を確認することが非常に重要です。
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2.信頼関係を構築するため
業務委託契約書の作成は、業務を委託する側とされる側の両者が、安心して業務を遂行するためにも重要な役割を果たします。
委託側(発注元)としては、委託する業務内容を明記することで、業務の進捗状況を把握しながら確認できます。一方業務を受託した側(発注先)も、報酬金額や支払い方法が明確であるため、業務に集中できるのがメリットです。
このように、契約書の作成によって両者に信頼関係が生まれ、より円滑に業務を遂行できるため、契約書の作成は必須といえるでしょう。
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業務委託契約書の作成方法と記載すべき13項目
業務委託契約書の作成にあたり、記載すべき13項目は次の通りです。
- 委託業務の内容
- 委託料(報酬額)
- 支払条件、支払時期、支払い方法など
- 成果物の権利
- 再委託の可否
- 秘密保持に関する条項
- 反社会的勢力の排除
- 禁止事項の詳細
- 契約解除の条件
- 損害賠償について
- 契約期間について
- 所轄の裁判所について
- その他の事項
それぞれ解説します。
1.委託業務の内容
まず、業務委託する業務の内容や、成果物についての詳細を明記しましょう。この内容によって、次に紹介する「業務委託契約の種類」が変わるため、委託内容は非常に重要な項目です。
2.委託料(報酬額)
委託料とは、委託先に支払う報酬です。報酬額がいくらなのか、税抜きと税込み金額を明記しましょう。
3.支払条件、支払時期、支払い方法など
業務委託契約書に記載するのは、委託金額とともに支払い条件や、時期、方法なども明記します。請負契約では、契約書に記載した通りの製品を、納期までに納品しなかった場合、契約不履行となり報酬を支払わないケースがあるため、しっかりと記載しましょう。
4.成果物の権利
業務委託契約では、委託した業務が成果物の納品を目的としていた場合に、その成果物の権利が発注先から発注元に移るのか否かも記載しましょう。このようなケースでは、著作権や商標権などが絡む取引となるため、事前に弁護士などに相談した上で契約書を作成すると安心です。
5.再委託の可否
業務委託では、委託した仕事をさらに二次下請けや三次下請けに回すこともあります。このようなケースでは自社の機密事項などが漏れやすくなるリスクがあるため、禁止する場合には、契約書にしっかりと明記しておきましょう。
6.秘密保持に関する条項
業務委託契約において、最も注意したい項目の1つが、この「秘密保持」に関する条項です。近年は個人情報の管理や企業のコンプライアンスを重視する傾向が強く、自社だけでなく、顧客情報などの取り扱いにも十分な注意が必要です。
もし委託する業務に自社の機密事項や取引先、顧客の情報がある場合には、別途秘密保持契約を交わし、万一に備える必要があります。
7.反社会的勢力の排除
こちらも企業のコンプライアンスに違反しないために注意すべき項目です。自社はもちろんのこと、相手先にも反社会的勢力とのかかわりがないか確認しましょう。
8.禁止事項の詳細
業務委託契約を結ぶ際に、上記以外の禁止事項があれば記載しましょう。できるだけ詳細に明記することが大切です。
9.契約解除の条件
契約書に記載した内容に違反があった場合などに、契約を解除できる条件を記載しておきます。万一の際に自社を守るための切り札となる条項ですので、あらゆるトラブルを想定して内容を決めましょう。また、契約解除は委託先にとっても一番厳しい条件となるため、常識の範囲内で設定すること。また、契約先と内容をすり合わせながら決めることが重要です。
10.損害賠償について
損害賠償についての項目も、万一の際に有効です。成果物の不備や欠陥、納期の遅れが許されない業務委託契約の場合には、損害賠償に関する条項を設けておきましょう。
11.契約期間について
契約期間を定めた取引する場合には、しっかりとその期間を明記します。契約期間の詳細によっては、契約書にかかる印紙税額が変わるため、こちらにも留意しながら記載しましょう。
12.所轄の裁判所について
業務委託契約書には、万一のトラブルで裁判となった場合に、所轄の裁判所がどこになるかを明記することが大切です。
特に遠方の業者や個人と契約を結ぶ際には、トラブルが発生した際の所轄の裁判所を明記しておかなければ「両者の中間の裁判所」を指定されるケースもあります。
そこで、あらかじめ発注者の最寄りの裁判所を明記しておき、委託先の合意を得ておきましょう。
実際に裁判に発展するトラブルは少ないものの、裁判所を記載しておくことがトラブルの抑止にも繋がります。
13.その他の事項
その他の事項には、上記以外で記載すべき内容があれば明記しましょう。
業務委託契約書テンプレート【すぐに使えるひな形】
ここまで業務委託契約書の作成方法や注意点について解説してきました。業務を委託する場合は下記のテンプレートを参考に業務委託契約書を作成してみてください。
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