再委託とは?業務委託のリスクや注意点、契約書の作り方を徹底解説
再委託とは、企業が委託した業務やプロジェクトの一部または全部を、委託先の企業が別の業者に委託することを言います。
委託先の業者が再委託して良いかどうかは、業務委託する側の企業に権限があるため、契約書に再委託の可否を明記しておくことが重要です。
再委託をする際は、元請け企業が発注先企業の了承を得たうえで行うのが一般的です。しかし、契約書に再委託に関する項目を明記しなかった場合に無断で再委託が行われ、重要な機密事項の漏洩が起きた場合には、業務を発注した企業が責任を負わなければならない可能性があります。
そのため、業務委託契約書の作成に関する法的な義務がなくても、必ず作成しておくべきといえるでしょう。
そこで今回は、業務委託の再委託について、そのリスクや注意点、契約書の作り方を徹底解説します。これから業務委託を行う方は、ぜひ参考にしてください。
再委託とは?
再委託とは、一般的に業務委託された仕事や業務を、さらに別の第三者に委託することを指します。
再委託が行われるケースとしては、プロジェクトの専門的な部分を外部の専門業者に委託する際に、委託先が自らの得意分野ではない別の専門業者に業務の一部を再委託する場合。
また、大きなプロジェクトに複数の企業や組織が協力して参加する際に、一部の業務を他の参加者に再委託することで、効率的に進めることができる場合。
政府機関や公共団体が公共サービスを提供する際に、民間企業に委託した業務を別の企業に再委託する場合などがあります。
再委託を行う際は、委託企業と受託側とが契約する際に慎重に考慮すべき重要な項目であるため、契約や取引条件などの細かい問題を含めた契約書の作成が必要です。
特に業務を委託する企業は、再委託先が同じ品質と信頼性を持って業務を遂行できるかどうかや、重要事項や機密事項を安全に守秘できるかなどを十分に評価することが重要です。
再委託のメリット3つ
委託元の企業が、発注先の企業の再委託を許可する場合には、以下の3つのメリットがあると考えられます。
- 製造スピードが上がる
- 成果物の品質が高くなる
- 生産量が多い案件でも依頼しやすい
それぞれ解説します。
1.製造スピードが上がる
製造スピードが上がるメリットは、再委託によって作業する人数が増えたり、設備の充実した委託先を利用できたりすることで、納期が厳しい案件でもスピーディーに対応できることです。
2.成果物の品質が高くなる
成果物の品質が高くなるメリットは、再委託によって委託先に足りない技術力やノウハウを補えたり、製造・生産ラインを増やしたりすることで、クオリティの高い納品物を仕上げられることです。
3.生産量が多い案件でも依頼しやすい
生産量が多い案件でも依頼しやすいメリットは、再委託によって委託先だけでは対応しきれない案件も受注できたり、海外の工場へ再委託することでコストを抑えたりできることです。
再委託で発生するリスク4つ
委託した業務を委託先が再委託する場合には、委託元の企業に次のようなリスクがあると考えられます。
1.品質や信頼性が損なわれるリスク
委託した業務が再委託されることで、再委託先が元の委託先と同じ品質や信頼性を持って業務を遂行できるかどうかが不確定となる場合があります。
そのため、再委託先がどのような企業(または個人)で、どのような実績があるかを調査する必要があります。
このように、再委託を認める場合は再委託先についての情報を収集し、十分確認した上で認めるかどうかを決定することが重要です。
2.コミュニケーションが取りにくくなるリスク
業務委託を行う企業にとっては、委託先の企業との密なコミュニケーションによる進捗管理が欠かせません。
しかし、委託業務が再委託されることで、再委託先の企業(または個人)とのコミュニケーションが取りにくくなる可能性があります。
コミュニケーションがうまく取れなくなることで、進捗状況の把握や課題の共有に問題をきたすリスクがあるでしょう。
3.責任の所在が曖昧になるリスク
委託業務の再委託が行われることで、責任の所在が曖昧になる可能性があります。
そのため業務委託をする際は、委託先と再委託先で、誰がどの業務に責任を持つのかについて明確に定義しておくことが重要です。
4.機密情報の漏洩に関するリスク
委託業務が再委託される場合、再委託先にも機密情報へのアクセスが必要なケースがあります。このような場合には、機密情報の漏洩リスクが発生します。
そこで、委託先や再委託先に対し、機密情報の適切な管理とセキュリティ対策ができているかを十分に確認することが重要です。
再委託で注意すべきポイント4つ
委託した業務が再委託される場合、委託元の企業は次のようなポイントに注意しましょう。
1.再委託先の確認
委託業に関する再委託を検討する際は、再委託先の信頼性や実績だけではなく、委託業務の要件を満たすだけの能力やスキルを持っているかを確認することが重要です。
委託業務に関する要件は、委託する企業ごとに異なるため、実績だけで判断せずに十分なヒアリングなどを行う必要があります。
2.契約書の作成と再委託項目の明示
再委託を認める場合には、委託先との契約書に内容を明示し、再委託先との法的な関係を正確に記しておくことが重要です。
業務を遂行する際の責任や支払条件、納期、品質基準などを含む業務委託契約書を作成し、トラブルを避けるための準備を整えましょう。
3.委託業務の品質管理
再委託を認める場合は、再委託先が適切な品質基準を満たすように、品質の管理体制を確立することが重要です。
ただし、業務委託する際は業務遂行に関する指揮命令権がないため、定期的なレビューや品質検査を行うことで、品質の維持を確保しましょう。
4.再委託先との意思疎通とコミュニケーション手段の確立
再委託を認める際は、再委託先との意思疎通とコミュニケーション手段を確立する必要があります。
業務の進捗状況はもちろん、問題や課題を共有し、スムーズなプロジェクト遂行を図りましょう。
再委託で業務委託契約書の作成が必須な理由2つ
業務委託や再委託を行う際は、企業と委託先との間で業務委託契約を結ぶのが一般的です。そして、業務委託契約を交わす際は、必ず業務委託契約書を作成しましょう。
業務委託契約書を作成すべき理由は、以下のとおりです。
1.トラブルを回避するため
業務委託とは、発注元の企業が業務の一部または全部を、社外の業者やフリーランスなどに委託することです。その際に、委託する業務の内容や再委託の可否を明確にしておかなければ、委託先が思うように仕事をできない可能性があります。
もし納品された製品が、注文通りのものでなかったとしても、契約書がなければ指摘できません。また納期についても契約書に記載しておかなければ、約束通りに納品されない可能性もあるでしょう。
このようなトラブルを避けるためにも、契約書に業務内容を明確に記し、納期や支払いに関する条件等を確認することが非常に重要です。
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2.信頼関係を構築するため
業務委託契約書の作成は、業務を委託する側とされる側の両者が、安心して業務を遂行するためにも重要な役割を果たします。
委託側(発注元)としては、委託する業務内容を明記することで、業務の進捗状況を把握しながら確認できます。一方業務を受託した側(発注先)も、再委託の可否や報酬金額が明確となるため、業務に集中できるのがメリットです。
このように、契約書の作成によって両者に信頼関係が生まれ、より円滑に業務を遂行できるため、契約書の作成は必須といえるでしょう。
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業務委託契約書の作成方法と記載すべき13項目
業務委託契約書の作成にあたり、記載すべき13項目は次の通りです。
- 委託業務の内容
- 委託料(報酬額)
- 支払条件、支払時期、支払い方法など
- 成果物の権利
- 再委託の可否
- 秘密保持に関する条項
- 反社会的勢力の排除
- 禁止事項の詳細
- 契約解除の条件
- 損害賠償について
- 契約期間について
- 所轄の裁判所について
- その他の事項
それぞれ解説します。
1.委託業務の内容
まず、業務委託する業務の内容や、成果物についての詳細を明記しましょう。この内容によって、次に紹介する「業務委託契約の種類」が変わるため、委託内容は非常に重要な項目です。
2.委託料(報酬額)
委託料とは、委託先に支払う報酬です。報酬額がいくらなのか、税抜きと税込み金額を明記しましょう。
3.支払条件、支払時期、支払い方法など
業務委託契約書に記載するのは、委託金額とともに支払い条件や、時期、方法なども明記します。請負契約では、契約書に記載した通りの製品を、納期までに納品しなかった場合、契約不履行となり報酬を支払わないケースがあるため、しっかりと記載しましょう。
4.成果物の権利
業務委託契約では、委託した業務が成果物の納品を目的としていた場合に、その成果物の権利が発注先から発注元に移るのか否かも記載しましょう。このようなケースでは、著作権や商標権などが絡む取引となるため、事前に弁護士などに相談した上で契約書を作成すると安心です。
5.再委託の可否
業務委託では、委託した仕事をさらに二次下請けや三次下請けに回すこともあります。このようなケースでは自社の機密事項などが漏れやすくなるリスクがあるため、禁止する場合には、契約書にしっかりと明記しておきましょう。
6.秘密保持に関する条項
業務委託契約において、最も注意したい項目の1つが、この「秘密保持」に関する条項です。近年は個人情報の管理や企業のコンプライアンスを重視する傾向が強く、自社だけでなく、顧客情報などの取り扱いにも十分な注意が必要です。
もし委託する業務に自社の機密事項や取引先、顧客の情報がある場合には、別途秘密保持契約を交わし、万一に備える必要があります。
7.反社会的勢力の排除
こちらも企業のコンプライアンスに違反しないために注意すべき項目です。自社はもちろんのこと、相手先にも反社会的勢力とのかかわりがないか確認しましょう。
8.禁止事項の詳細
業務委託契約を結ぶ際に、上記以外の禁止事項があれば記載しましょう。できるだけ詳細に明記することが大切です。
9.契約解除の条件
契約書に記載した内容に違反があった場合などに、契約を解除できる条件を記載しておきます。万一の際に自社を守るための切り札となる条項ですので、あらゆるトラブルを想定して内容を決めましょう。また、契約解除は委託先にとっても一番厳しい条件となるため、常識の範囲内で設定すること。また、契約先と内容をすり合わせながら決めることが重要です。
10.損害賠償について
損害賠償についての項目も、万一の際に有効です。成果物の不備や欠陥、納期の遅れが許されない業務委託契約の場合には、損害賠償に関する条項を設けておきましょう。
11.契約期間について
契約期間を定めた取引する場合には、しっかりとその期間を明記します。契約期間の詳細によっては、契約書にかかる印紙税額が変わるため、こちらにも留意しながら記載しましょう。
12.所轄の裁判所について
業務委託契約書には、万一のトラブルで裁判となった場合に、所轄の裁判所がどこになるかを明記することが大切です。
特に遠方の業者や個人と契約を結ぶ際には、トラブルが発生した際の所轄の裁判所を明記しておかなければ「両者の中間の裁判所」を指定されるケースもあります。
そこで、あらかじめ発注者の最寄りの裁判所を明記しておき、委託先の合意を得ておきましょう。
実際に裁判に発展するトラブルは少ないものの、裁判所を記載しておくことがトラブルの抑止にも繋がります。
13.その他の事項
その他の事項には、上記以外で記載すべき内容があれば明記しましょう。
業務委託契約書テンプレート【すぐに使えるひな形】
ここまで業務委託契約書の作成方法や注意点について解説してきました。業務を委託する場合は下記のテンプレートを参考に業務委託契約書を作成してみてください。
業務委託におすすめの人材サービス11選
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