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「正社員に最低賃金は関係ない」は間違い!正社員の給料と最低賃金の関係、引き上げによる企業への影響とは

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最低賃金と聞くと、時給制で雇用する非正規社員の給料に注目しがちです。しかし、正社員の給料にも最低賃金は適用されます。最低賃金は法律で定められているものであるため、正社員の給料が最低賃金を下回っていると法律違反となります。

本記事では、正社員の給料と最低賃金の関係や最低賃金を下回っていないかを確認する方法、最低賃金の引き上げによる企業への影響とその対策について解説します。

「正社員に最低賃金は関係ない」は間違い

最低賃金は、雇用形態に関係なくすべての労働者に適用されるものです。最低賃金法に基づき、企業はすべての労働者に対して最低賃金以上の給料を支払う義務があります。

残業代やボーナスは最低賃金が関係ない

最低賃金の考えが適用されるのは、総支給額に対する「毎月支払われる基本的な賃金」の部分です。具体的には「基本給」と「諸手当」が該当します。手当にはさまざまな種類がありますが、対象となるのは一部の手当です。

 

最低賃金の対象となる手当

最低賃金の対象外となる手当

・役職手当

・職務手当

・資格手当


・通勤手当

・家族手当

・住宅手当

・子女手当

・精皆勤手当

・時間外・休日労働手当

・深夜勤務手当

・臨時で発生する賃金(賞与など)

そもそも最低賃金とは

最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた制度です。最低賃金法に基づき、国がその額を定めています。

労働者が合意したとしても、最低賃金額より低い賃金で締結した労働契約は無効となり、最低賃金額で契約を結んだものとみなされます。

最低賃金の種類

最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。

 

地域別最低賃金

都道府県ごとに定められている最低賃金

特定(産業別)最低賃金

特定の産業に設定されている最低賃金であり、地域別最低賃金よりも金額水準が高い

一般的なのは、産業や職種にかかわりなく適用される地域別最低賃金です。地域によって金額はさまざまであり、都市部ほど金額水準が高くなります。

一方、特定(産業別)最低賃金は都道府県ごとに特定の産業について適用される最低賃金です。令和6年3月末時点で全国224件の特定(産業別)最低賃金が定められています。たとえば、東京であれば下記の産業が対象です。

・鉄鋼業

・はん用機械器具、生産用機械器具製造業

・業務用機械器具、電気機械器具、情報通信機械器具、時計・同部分品、眼鏡製造業

・自動車・同附属品製造業、船舶製造・修理業,舶用機関製造業、航空機・同附属品製造

最低賃金は毎年改定がおこなわれている

最低賃金は毎年7〜8月頃に改定内容が決定し、10月頃に適用されます。

とはいえ、毎年必ず引き上げられるわけではありません。引き下げられることはありませんが、状況によっては据え置きになることがあります。

なお、地域別最低賃金の決定基準は「労働者の生計費」「労働者の賃金」「通常の事業の賃金支払能力」の3つのポイントです。

全国的な整合性を図るため、中央最低賃金審議会から提示された引き上げ額の目安を参考に、地域の実情に応じた最低賃金額が決定されています。

正社員の給料が最低賃金を下回るのは法律違反

最低賃金は、1時間あたりの賃金の最低額であるため、月給制となる正社員にはあまり馴染みがないかもしれません。

しかし、前述したように最低賃金は雇用形態に関係なく、すべての労働者に適用される制度です。

地域別最低賃金以上の給料を支払わない場合には、最低賃金法にもとづき50万円以下の罰則が科されます。

また、特定(産業別)最低賃金以上の給料を支払わない場合は、労働基準法にもとづき30万円以下の罰金が科されることとなります。

もし企業が労働者に対して最低賃金未満の給料しか払っていない場合、その差額を支払わなければなりません。

正社員の給料が最低賃金を下回っていないかを確認する方法

正社員の給料が最低賃金を下回っていると、法律違反として企業に罰則が科されます。月給制ですと見落とされがちですが、正社員に支払っている給料が最低賃金を下回っていないかをしっかりと確認することが重要です。

ここでは、正社員の給料が最低賃金を下回っていないかを確認する方法を解説していきます。

まずは全国の最低賃金をチェック

ここでは、一般的となる「地域別最低賃金」をチェックしていきます。最新の最低賃金は令和6年10月に発効しており、全国的に5〜7%の引き上げとなっています。

 

都道府県

最低賃金

北海道

1,010円

青森

953円

岩手

95円2

宮城

973円

秋田

951円

山形

955円

福島

955円

茨城

1,005円

栃木

1,004円

群馬

985円

埼玉

1,078円

千葉

1,076円

東京

1,163円

神奈川

1,162円

新潟

985円

富山

998円

石川

984円

福井

984円

山梨

988円

長野

998円

岐阜

1,001円

静岡

1,034円

愛知

1,077円

三重

1,023円

滋賀

1,017円

京都

1,058円

大阪

1,114円

兵庫

1,052円

奈良

986円

和歌山

980円

鳥取

957円

島根

962円

岡山

982円

広島

1,020円

山口

979円

徳島

980円

香川

970円

愛媛

956円

高知

952円

福岡

992円

佐賀

956円

長崎

953円

熊本

952円

大分

954円

宮崎

952円

鹿児島

953円

沖縄

952円

厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧

次に正社員の月給を時給換算する

最低賃金は時給表示であるため、正社員の月給を時給換算していきます。計算の手順は、以下のとおりです。

① 月給の総額−計算に含めない手当の総額

② ①で算出した金額×12

③ ②で算出した金額÷1年間の所定労働日数

④ ③で算出した金額÷所定労働時間

以下のような手当は計算に含めません。

・通勤手当

・家族手当

・住宅手当

・子女手当

・精皆勤手当

・時間外・休日労働手当

・深夜勤務手当

・臨時で発生する賃金(賞与など)

時給換算額が算出できたら、企業が所在する都道府県の最低賃金額と比較して下回っていないかを確認しましょう。

正社員の時給換算額の水準

企業規模や役職、業種や職種によって正社員の時給換算額はさまざまですが、年代・男女別でみた総合的な時給換算額の水準は以下のとおりです。

   


男女計

男性

女性

〜19歳

1,139円

1,143円

1,133円

20〜24歳

1,351円

1,371円

1,328円

25〜29歳

1,557円

1,603円

1,492円

30〜34歳

1,737円

1,813円

1,596円

35〜39歳

1,931円

2,036円

1,691円

40〜44歳

2,094円

2,245円

1,752円

45〜49歳

2,209円

2,400円

1,798円

50〜54歳

2,329円

2,529円

1,861円

55〜59歳

2,391円

2,603円

1,862円

60〜64歳

2,063円

2,199円

1,715円

65〜69歳

1,847円

1,959円

1,533円


※厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」をもとに算出

通常、正社員の時給換算額は1,000円を下回ることはないため、最低賃金額より低くなることはないでしょう。

しかし、時給換算額の計算には残業代やボーナスといった年収に大きく影響する賃金は含めません。年収でみれば水準を下回らない給与額だとしても、残業が多かったり、月給は少なくボーナスの割合が大きいといったケースでは、最低賃金額を下回るおそれがあるため要注意です。

最低賃金の引き上げが企業にもたらす影響

最低賃金は毎年改定がおこなわれていますが、引き下げられることはなく、据え置きあるいは引き上げのどちらかです。正社員の給料も最低賃金が関係するとなれば、引き上げによって企業には以下のような影響が考えられるでしょう。

人件費の負担が増える

最低賃金が引き上げられれば、それだけ人件費の負担が増加します。とくに、中小企業や労働集約型産業への影響は大きいもの。場合によっては、従業員数や雇用時間の見直しが必要となる可能性があるでしょう。

くわえて、最低賃金の引き上げに伴い企業が一律で賃金を上げていく中、より良い人材を獲得するにはさらにコストをかけなければいけなくなります。人材獲得競争に勝つためにさらにコストがかかり、経営を圧迫するおそれもあります。

正社員が給料に不満を感じる

時給制で雇用される非正規社員は最低賃金の引き上げに伴い、時給がアップしていきます。しかし、正社員は通常最低賃金を下回ることがないため、最低賃金の引き上げによる恩恵はあまり受けられません。

さらに、2024年4月1日からは同一労働同一賃金が適用されたこともあり、正社員と非正規社員の待遇差はより解消されつつあります。

非正規社員の給料だけ上がっていく中、とくに変わることがない正社員はモチベーションが下がったり、給料に不満を抱えたりするおそれがあるでしょう。

扶養内で働く従業員のシフトが減る可能性がある

最低賃金が引き上げられても、扶養範囲の金額は変わりません。つまり、扶養内にとどめるためには、労働時間を減らす必要があります。扶養内で働く従業員が多い職場では、その影響で人手不足に陥る可能性がある点に注意が必要です。

最低賃金の引き上げに伴い企業が取るべき対策

最低賃金の引き上げによる企業への影響を抑えるには、以下のような対策が有効です。

生産性を高める工夫をする

最低賃金の引き上げによる人件費の増加は避けられないため、そこを無駄にしないためには従業員の生産性を高めることがポイントです。生産性を高める取り組みとして、業務のIT化・DX化や業務プロセスの見直しが挙げられます。

IT・DX化による定型業務の自動化や業務プロセスの見直しによる業務のムダをなくすことで、全体の生産性が高まります。

人事制度全体を見直す

人事制度全体を見直し、不満の出ない公平な待遇を実現することも有効な対策です。

ただ非正規社員の給料を最低賃金の引き上げに則って上げるだけでは、正社員の不満につながるおそれがあります。そのため、正社員と非正規社員の役割や責任の度合いを明確にし、そこに応じた給与体系や評価制度を導入することがポイントです。

今の給料に対する根拠を明確に示すことが、給料への漠然とした不満の解消につながります。

最低賃金の引き上げ前に採用を強化する

最低賃金の引き上げ後は、人材獲得競争がより激しくなります。競合が一律で賃金を上げるなか、より良い人材を獲得するにはより高い賃金を提示して差別化する必要があるでしょう。最低賃金の引き上げ前に採用を強化することで、競合が賃金を引き上げる前に良い人材を確保できるかもしれません。

まとめ

「正社員に最低賃金は関係ない」は間違いであり、正社員の給料の時給換算額は最低賃金を上回っている必要があります。月給制ですと時給換算額が見落とされがちですが、時給換算額が最低賃金を下回っていると法律違反となるため要注意です。


また、最低賃金は例年引き上げられており、それに伴い企業の人件費も高騰し続けていくでしょう。正社員の給料も最低賃金に関係することを理解し、企業は適正な給料を支払うこと、そして最低賃金の引き上げによる影響を抑えるために対策を講じることが求められます。

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