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嘱託社員とは?正社員との違いや労働条件、メリット・デメリットや雇用する際の注意点を解説

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嘱託社員とは、雇用期間に定めがある非正規の社員です。定年後の再雇用制度に準じて雇う社員のことを嘱託社員と呼ぶケースが多いですが、専門的なスキル・知識を持つ人を有期雇用で雇う場合も嘱託社員と呼ぶことがあります。

本記事では、嘱託社員とは何かをふまえ、労働条件や正社員との違い、メリット・デメリットや雇用時の注意点を詳しくご紹介します。

嘱託社員とは 

嘱託社員は有期雇用の社員であり、「定年後に再雇用された社員」という意味で使われることが多い言葉です。そのほかでは、専門的な能力を持った人に仕事を依頼する場合、その人のことを嘱託社員と呼びます。

そもそも、嘱託は「報酬を支払って仕事を依頼すること」を意味する言葉です。一定期間業務を委託する形で働いてもらう雇用形態の場合に、嘱託社員という言葉を使うことがあります。

嘱託社員は継続雇用制度の一種

嘱託社員は、定年後の継続雇用制度の一種となる働き方です。定年後、同一企業で再雇用する場合は有期雇用契約を結び、嘱託社員として働いてもらうケースが多くみられます。

高年齢者雇用安定法により、企業には70歳までの就業機会の確保が求められています。そのための施策として、70歳までの定年引き上げや定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置を講じることが努力義務とされています。嘱託社員はその一環として取り入れられている働き方です。

嘱託社員の労働条件|正社員の違いをチェック

嘱託社員を雇用するにあたって、正社員との違いを押さえておくこともポイントです。

雇用期間

正社員は雇用期間の定めがない、無期雇用契約の社員です。一方、嘱託社員は有期雇用の社員であり、一般的には1年ごとに契約を更新していきます。なお、雇用期間は最長5年です。

1年ごとに契約の更新が行われるのは、社員の健康状態に配慮するためです。このとき、労働条件の見直しもおこなわれるため、無理のない条件で雇用を継続できます。

給与・ボーナス

嘱託社員の給与やボーナスは、正社員よりも下がるケースが一般的です。ボーナスについては企業のボーナス制度の有無にもよりますが、ボーナス制度がある場合には嘱託社員にも支給するケースもみられます。

嘱託社員は正社員と比べ勤務日数や時間が少なく、任される業務内容の範囲や責任の重さも異なります。そのため、給与は基本的に下がると考えて良いでしょう。ただし、同一労働同一賃金のもと、定年前と同じ労働条件・業務内容で働く場合には、給与を含め待遇も同等でなければなりません。

なお、少し古いデータになりますが、2021年に日経ビジネスが実施した定年後の就労に関する意識調査では、以下のような結果が出ています。

・年収は定年前の4〜6割程度に減少した層がもっとも多い

・勤務時間や日数は定年前と同水準のケースが多い

・半数以上が責任のある地位から外れているが、定年前とほぼ変わらない層も41.9%と半数近い

社会保険

社会保険は、再雇用の労働条件が下記を満たす場合には加入対象です。

・週の所定労働時間が20時間以上

・給与が月額88,000円以上

・2ヶ月を超えて雇用される予定がある

・学生でない

労災保険と雇用保険については、雇用形態にかかわらず加入が必要であるため、上記の条件に関係なく加入が必要です。

有給休暇

有給休暇は、正社員と同様に付与されます。同一企業でそのまま嘱託社員として再雇用した場合は、正社員時の有給休暇をそのまま引き継ぐことが可能です。ただし、それ以降新たに付与される有給休暇は、勤務日数や時間によっては日数が減る場合もあります。

新しく嘱託社員になった場合は、通常の新入・中途社員と同じように入社6ヶ月以降に有給休暇が発生します。

嘱託社員と他雇用形態との違い

嘱託社員のほかにも、有期雇用の形態となる働き方に契約社員やアルバイト・パート、派遣があります。あわせて、これらの雇用形態との違いについても押さえておきましょう。

嘱託社員と契約社員との違い

嘱託社員と契約社員は雇用形態の面では同じですが、働く対象者に違いがあります。嘱託社員と呼ばれるのは「定年後に再雇用された人」または「専門的なスキル・知識を持つ人」です。対して、契約社員は対象者に決まりはありません。

また、嘱託社員は勤務日数や時間、業務内容が正社員と異なる場合がありますが、契約社員は正社員と変わらないケースがほとんどです。

嘱託社員とアルバイト・パートとの違い

アルバイト・パートは、短時間のシフトで働く人が多い雇用形態です。業務内容も正社員ほど責任は重くなく、スポット的に現場を支える役割をもちます。嘱託社員も労働条件によっては、アルバイト・パートと同じような働き方となる場合もあるでしょう。

しかし、アルバイト・パートは時給制であるのに対し、嘱託社員は正社員や契約社員と同じく基本的には月給制です。業務内容も正社員と同じ、あるいは近い水準のレベルとなる点はアルバイト・パートとの主な違いです。

嘱託社員と派遣社員の違い

嘱託社員と派遣社員の大きな違いは、雇用元です。嘱託社員は企業と直接雇用契約を結んで働きますが、派遣社員の雇用元は派遣会社であり、派遣会社と雇用契約を結びます。また、派遣社員はアルバイト・パートと同様に、時給制の給与形態となるケースが多い点も嘱託社員との違いでしょう。

嘱託社員のメリット

嘱託社員は、企業と社員の双方にメリットがある制度です。それぞれの視点から、メリットについてみていきましょう。

企業側のメリット

企業が嘱託社員を雇用する最大のメリットは、即戦力を確保できることです。再雇用の嘱託社員であれば自社への理解が深く、業務をそのまま担当してもらえるため、新たな採用・教育コストがかかりません。

また、定年後の再雇用では基本的に給与が下がるため、人件費を抑えられる点も企業側のメリットでしょう。

一方、能力がある人を雇うケースでの嘱託社員では、スキルを持つ人材を必要なときにスポット的に確保できる点でメリットがあります。

社員側のメリット

定年後の再雇用の場合、慣れた環境で定年前と同じ業務を担当できる点は社員側のメリットです。違う部署に配属された場合でも、自社の事業や業務への理解が深く、環境に慣れていることからも精神的な負担は少ないでしょう。

また、勤務日数や時間を柔軟に調整できる点も社員側のメリットの一つです。

嘱託社員のデメリット

一方で、嘱託社員を雇用すること、嘱託社員として働くことには少なからずデメリットもあります。デメリットも理解した上で、嘱託社員という雇用形態を導入するのか、嘱託社員を採用するのかを検討しましょう。

企業側のデメリット

嘱託社員は1年ごとに契約を更新するため、その点の労務負担は増えるでしょう。また、労働条件の見直しも可能となるため、変更がある場合には任せる業務を調整する必要が出てくるかもしれません。

そして。再雇用の嘱託社員は、定年前と比べて給与が下がったり、責任のある業務を任されにくくなったりするため、モチベーションが低下しやすいでしょう。さらに、年齢を重ねるとともに、従来のようなパフォーマンスを発揮することが難しくなることで、仕事への意欲が低下してしまうおそれもあります。

この点は、企業側が社員の状態を把握し、アフターフォローを欠かさないことが大切です。

社員側のデメリット

有期雇用であるため、契約が更新されない可能性もある点はデメリットです。契約更新のスパンも1年と短いため、働き続けたい意思がある人にとっては不安要素となるでしょう。

また、正社員の時に比べて待遇が下がるケースも多く、仕事へのモチベーションは低下する可能性がある点もデメリットの一つです。さらに、再雇用の場合は昔の部下が上司になる可能性もあり、働く上で気まずさを感じることがあるかもしれません。

嘱託社員を雇用する際の注意点

嘱託社員を雇用する際、企業は以下のポイントに注意が必要です。

正社員との給与・手当に大きな差をつけない

正規雇用者と非正規雇用者との間の不合理な待遇差の解消を目指すため、同一労働同一賃金が掲げられています。そのため、定年後に正社員から嘱託社員になった、あるいは嘱託社員を新規で雇用した場合、給与や待遇面で正社員と格差をつくらないよう注意しましょう。

とくに、定年後に再雇用する場合、定年前と業務内容や責任に変化がないにもかかわらず、嘱託社員であるという理由だけで給与を下げることは法令違反に当たる可能性があります。

人件費削減のために給与を下げたい場合には、業務量や業務範囲を減らすなどの対応が必要です。

契約期間が5年を超えると無期転換ルールが適用される

嘱託社員としての契約期間が通算5年を超える場合、無期転換ルールが適用されます。社員から無期転換の申し込みがあった場合、企業側は拒否できません。なお、無期転換ルールは正社員になるわけではなく、嘱託社員として契約期間が無期限になるということです。

ただし、無期転換ルールには高齢者の特例があります。有期雇用特別措置法により、下記条件のもとでは無期転換申し込み権が発生しないとする特定が設けられています。

①適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局庁の認定を受けた企業である

②①の下で定年に達した後、引き続いて雇用される恒例の有期雇用労働者

ただし、定年後にグループ会社ではない企業に再就職した場合は特例の対象外です。

無期転換ルールで高齢の嘱託社員は何歳まで働ける?

特例を除き、無期転換ルールは年齢に関係なく発生する権利であるため、高齢の嘱託社員に適用されると、実質永続的に働けることになります。しかし、健康や安全管理の面から一定の年齢で雇用を止めたい場合もあるでしょう。

この場合、下記2つの方法を組み合わせることで無期雇用転換権が発生しません。

・第二定年を設ける

・有機特別措置法の計画にて、第二定年後の再雇用までを対象とする

新規で高齢の嘱託社員を雇用する場合、無期転換ルールの高齢者の特例が適用されません。そのため、自社社員の再雇用ではない方法で高齢者を嘱託社員として雇用する場合には、この点についても対応が必要です。

まとめ

嘱託社員とは「定年後の人」または「専門的なスキル・知識を持つ人」を有期契約で雇用した場合の社員の名称です。定年後に再雇用した社員を指す言葉として使われることが多く、嘱託社員は継続雇用制度の一種として導入する企業も増えています。

嘱託社員という制度を設けることで、定年後も引き続き同じ業務を担当してもらうことができるため、企業側は人材不足の解消の面でメリットがあります。ただし、年齢を重ねていくと健康やパフォーマンスにも徐々に影響が出てくることがあるため、その点に配慮しながら雇用を継続することが大切です。

嘱託社員制度の導入や雇用を検討している方は、ぜひ本記事を参考に嘱託社員への理解を深めてみましょう。

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