業務委託の労働時間はどうなる?企業が知っておくべき法的リスクと契約管理
「業務委託なら残業代は不要だし、何時間働かせても問題ない」と思っていませんか。その考え方は危険です。
業務委託でも、後から「実態は雇用だった」と判断され、未払いの残業代や社会保険料を遡って請求されることがあります。
そこで本記事では、業務委託と労働時間の関係について、発注側の企業担当者が今すぐ確認すべき法的知識を整理して紹介します。
業務委託で労働時間は関係ない?業務委託と雇用の違い
業務委託契約とは、企業が自社業務の一部またはその全てを外部の人材に委託し、成果物の納品や業務の遂行に対して報酬を支払う契約のことです。主従関係がある雇用契約とは異なり、業務委託では発注者と受注者は対等な関係になります。(以下図参照)

また業務委託は雇用ではないため、「労働時間」ではなく、「稼働時間」と表現することが一般的です。
ただし受注者の働き方が労働者に近いと、業務委託でも労働時間の考え方が反映され、企業に責任が問われる可能性がある点には注意が必要です。
【業務委託の契約別】労働時間(稼働時間)の上限
業務委託には主に「請負契約」と「準委任契約」があり、それぞれ労働時間(稼働時間)への考え方が以下のように異なります。
上記の通り、請負契約は「成果物の納品」が目的となるため、稼働時間そのものが問題になるケースは少ないです。
一方、準委任契約は「業務の遂行」が目的で、「月額・時給の固定報酬」「業務ごとの固定報酬」で報酬を支払うため、稼働時間の上限を設定することが多いです。契約の性質上、「労働」に近い働き方を無意識にしてしまう恐れがある点には注意が必要です。
また業務委託の場合、労働基準法が定める労働時間の上限は適用されず、受注者が自らの意思で週に何時間働いても問題ありません。
ただし、受注者が過労死ライン(月100時間の時間外労働)まで働いている場合、業務委託でも、発注側には「安全配慮義務」が一定程度生じます。そのため、過度な長時間稼働は制限するのが望ましいです。
業務委託の労働時間問題で押さえておきたい法律
ここでは、業務委託の労働時間問題で押さえておきたい法律を紹介します。
フリーランス法

2024年11月1日に「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)」が施行されました。
この法律は、労働時間そのものを規制する法律ではありませんが、フリーランスに業務委託を進めている発注企業は内容把握が求められます。フリーランス法で企業に課される主な義務は以下の通り。
フリーランス法で企業に課される主な義務
- 業務委託の内容・報酬・支払期日などを書面または電磁的方法で明示する
- 報酬を納品日から60日以内に支払う
- 買いたたきや返品などはしない
- 虚偽の募集をしてはならない
- 育児・介護との両立に配慮する
- ハラスメント防止措置を講じる
- 6か月以上の契約を中途解除する場合、原則30日前までに予告する
出典:中小企業庁-特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)(パンフレット)
もし仮に不当な対応をしてフリーランスが行政機関に報告をした場合、行政機関より発注企業に指導・助言がされます。勧告に従わない場合は命令・公表がされ、命令違反となれば50万円以下の罰金が科せられるため注意が必要です。(以下図参照)

出典:中小企業庁-特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)(パンフレット)
また発注側の企業は、フリーランスが行政機関に申出をしたことを理由に、契約解除といった不利益な扱いはしないようにしましょう。
関連記事:業務委託で時間管理は違法?偽装請負となる労務・勤怠管理の注意点を解説
労働基準法
契約形式が業務委託であっても、働き方の実態が「労働者」と判断されれば労働基準法が適用されます。日本の労働法では、契約の名目(業務委託、請負、フリーランスなど)よりも、「雇われて働いている実態(労働者性)」が最優先されるためです。
労働者性と判断される主な基準は、以下のようなポイントから総合的に判断されます。
労働者性と判断される主な基準
仮に労働者と認められた場合、発注側の企業には、以下のような義務・責任を問われる可能性があります。
また、業務委託契約で雇用とみなされた場合、受注者から残業代・社保の遡及請求が発生する可能性があります。
残業代請求リスクを避けるには日々の運用を見直すことが重要です。指示の出し方・報酬の設定・稼働管理の方法を整備しておきましょう。
関連記事:業務委託で残業代が発生するケースやトラブルを防ぐ労務管理のコツを解説
労働者派遣法・職業安定法
契約形式が業務委託でも働き方が「労働者」と判断された場合、労働者派遣法および職業安定法が関係し、それらの法律に違反しているとみなされます。たとえば各法律から、以下のような厳しいペナルティが適用される可能性があります。
偽装請負と判断された場合の法律上のペナルティと影響
参考:福岡第一法律事務所-「偽装請負」について
業務委託で発生しやすい「偽装請負」と「過重労働」の問題

業務委託の労働時間で発生するトラブルは、おもに「実態の労働者化(偽装請負)」と「本人の過重労働」に分類されることが多いです。
偽装請負の概要と問題事例
偽装請負とは、契約書上は業務委託の形式をとりながら、実態は発注者がフリーランスや外注先の労働者に直接指揮命令を行っている状態のことを指します。

偽装請負とみなされやすい具体的な問題事例は以下の通り。
特に注意が必要なのは、意図せず偽装請負になっているケースです。
たとえば、現場の担当者が法令や契約内容を十分理解しないまま、「業務委託先のフリーランスに日常的にSlackやメールで細かい作業指示を出している」といった状況です。
こうしたことが積み重なると偽装請負と判断される可能性があるため、企業側は社内ガイドラインの作成と現場周知が欠かせません。可能であれば「案件責任者(窓口)」を一人に限定し、指揮命令が強くならないよう工夫していきましょう。
参考:楠本人事労務研究所-経営者・人事担当者が押さえておきたい副業・業務委託の法的リスクと就業規則の重要性
過重労働の概要と問題事例
業務委託契約において、発注者が受注者の労働時間を直接管理する義務はありません。ただし、納期や業務量の設定によっては、意図せず受注者への負担が大きくなってしまうケースもあるため、発注側としての配慮が大切です。
出典:副業・兼業している者の労働時間管理が問題となった事例~大阪地裁令和3年10月28日判決(労働判例1257号17頁)~弁護士:五十嵐 亮
上記のように、副業の方に業務を依頼する場合もリスクは存在します。本業と並行して対応いただく以上、無理のないスケジュールや業務量を意識することが、受注者の安定したパフォーマンスの維持とプロジェクトの品質向上につながります。
フリーランスの方と長期的に良い関係を続けていくためにも、契約前のすり合わせの段階で稼働状況や負担感を確認する習慣を持つことをおすすめします。
関連記事:偽装請負とは?業務委託契約で違法となる3つの判断基準と罰則事例を解説
業務委託で稼働時間(労働時間)を設定する方法

エンジニアやデザイナーと業務委託契約を結ぶ際を例に挙げ、業務委託で稼働時間(労働時間)を設定する方法を紹介します。
エンジニアへの外注の場合
エンジニアの外注では、デザインや記事制作と異なり成果物が見えにくいため、稼働時間に幅を持たせた「時間幅契約(下限〜上限)」という形で広く使われています。ただし、これはあくまで業務量の目安であり、始業・終業時刻の指定や勤怠管理は行いません。
エンジニアへの業務委託の例は以下の通りです。
下限時間(例:140時間)を下回った場合は報酬を減額、上限時間(例:180時間)を超えた場合は追加報酬を協議する形にすることで、発注側・受注側双方にとって公平な契約となります。
作業時間の報告はあくまで業務の確認が目的であり、指揮命令や勤怠管理にならないよう運用上の注意が必要です。
デザイナーへの外注の場合
デザイナーへの業務委託の場合、稼働時間は「上限の目安」として契約書に明記するにとどめ、時間の拘束は行いません。あくまで「月10本のバナーを納品する」という成果物に対して報酬を支払う形にすることが重要です。
以下は、デザイナーへの業務委託の例となります。
稼働時間の目安を設けるのは、発注側・受注側双方が業務量の認識をすり合わせるためであり、時間管理や勤怠管理が目的ではありません。月10本を超える追加依頼が発生した場合は、都度協議のうえ追加報酬を設定します。
業務委託で労働時間のリスクを避ける契約書・管理体制のポイント
業務委託契約では、契約書の内容と日々の運用の両面から、雇用との混同を避ける体制を整えることが重要です。以下のポイントを参考に、契約内容と管理体制を見直しましょう。
▼ 契約書に明記すべき項目
常駐が必要な場合も、契約書に「業務遂行上の合意」として明記し、勤怠管理は行わないようにしましょう。報告を求める場合は「業務の進捗確認」を目的とし、頻度・形式も受注者と合意のうえ設定します。
さらに業務委託契約は一度締結して終わりではなく、定期的に実態と契約内容が合致しているかを確認することが重要です。
業務量・成果物・報酬が実態とずれていないか、3〜6ヶ月ごとに契約を見直すことを推奨します。業務内容や条件が変わった場合は口頭で済ませず、覚書や契約変更書を締結することも重要です。

自社の契約は大丈夫?業務委託の労働者性チェックリスト
業務委託契約でも、実態として「労働者性」が強い場合は、労働基準法や社会保険の対象と判断される可能性があります。まずは以下のチェックリストで、自社の契約・運用状況を確認してみましょう。
業務委託で問題が起きたときの相談窓口と対処フロー
業務委託契約でトラブルが発生した場合、早期対応が重要です。問題の深刻度に応じて、適切な窓口へ相談しましょう。以下は、業務委託で問題が起きたときの対処フローです。

主な相談窓口/社労士・弁護士への相談タイミング
社外の専門家への相談は、問題が複雑化する前の早い段階で行うことが理想です。以下のタイミングを目安にしてください。
いずれも問題が顕在化してから動くのではなく、契約締結前や運用変更のタイミングで定期的に専門家の目を入れることが理想的です。
社内で整備すべき管理ルール
トラブルを未然に防ぐために、以下の管理ルールを社内で整備しておきましょう。
参考:
フリーランス・事業者間取引適正化等法の考え方についての相談窓口
フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ |厚生労働省
業務委託の労働時間でよくある質問

Q. 契約書記載の稼働時間を超過した場合はどうすればいい?
契約書に定めた稼働時間を超過する場合は、まず受託者との協議が必要です。
業務委託契約では、超過分の報酬は契約上の義務ではないため、追加費用が発生することがあります。超過が見込まれる段階で早めに受託者へ連絡し、追加契約や覚書の締結、報酬の見直しを行いましょう。
なお、常態的な超過は契約内容の見直しのサインです。業務範囲や納期を再検討し、適切な稼働時間に設定し直すことをおすすめします。
Q. 受注者から「残業代がほしい」と言われたら?
業務委託契約において、残業代という概念は原則として存在しません。残業代は雇用契約における労働者に適用されるものであり、受注者が個人事業主や法人であれば、労働基準法上の残業代支払い義務は発生しません。
ただし、契約で定めた稼働時間を大幅に超えた業務を依頼していた場合は、追加報酬について協議することが望ましいでしょう。また、実態として指揮命令関係が強い場合は「偽装請負」とみなされるリスクがあるため、契約・業務運用の見直しを検討してください。
Q. 副業人材に業務委託をしている場合の労働時間はどうなる?
副業者に業務委託している場合、その方の労働時間管理は基本的に原業(本業の雇用先)の責任となります。発注企業が労働時間を管理・拘束する必要はありませんが、副業人材への業務委託も実態として指揮命令していると、「偽装請負」とみなされるリスクがあります。
厚生労働省の副業・兼業ガイドラインも参考に、適切な契約・運用を心がけましょう。
労働時間の縛りなしで業務委託で成果を出すコツ
業務委託では労働時間を指定・管理できないからといって、「放任すればよい」という意味ではありません。むしろ時間ではなく「成果」で管理する仕組みを意図的に設計することが、発注側企業に求められます。
ここでは、労働時間の縛りがない業務委託契約において、優秀なフリーランスと成果を出し続けるための実務的なコツを紹介します。
1.成果物の定義を明確にする
雇用契約であれば、上司が都度修正指示を出せますが、業務委託では過度な指示自体はできません。だからこそ、発注前の要件定義と成果物の定義が重要です。具体的には、契約書や発注書の段階で以下を明文化します。
双方が合意した明確なゴールを文書で持っておくことが、後のトラブルを防ぐ予防策になります。
2.業務の見える化で進捗確認を徹底する
受注者は自分の裁量で業務を進めるため、発注側が業務の進捗を把握しておくことが重要です。見える化の仕組みを整えると、確認コストを下げながら品質も担保できます。
たとえばエンジニアへの発注であれば、以下のような仕組みが効果的です。
- プログラムが更新されると、自動で反映される仕組みを整えておく
- デザイン・ドキュメントの共有
- 定期的なデモ・レビューの場を設ける

たとえば作業の変更履歴が残るツールを共通で使うと、フリーランスの作業状況をリアルタイムで把握できます。業務委託の労働問題の側面だけでなく、過度なSlack連絡や口頭確認を減らせる点から業務効率にもなります。
さらに、週次MTGに進捗時間を組み込み、仕様とのズレを早期に発見し、手戻りを最小限に抑えます。仮に開発途中で仕様変更が発生した場合、その責任は多くの場合、発注側の要件定義の不備にあります。にもかかわらず、フリーランスに追加作業を「当初の契約範囲内」として押しつけるのは信頼関係を損なう行為です。
優秀なフリーランスと長く付き合うには、仕様変更が生じたら追加タスクを発行し、別途報酬の支払いを検討します。こうしたスタンスを実践する企業には「一緒に仕事をしたい」と思うフリーランスが集まりやすく、結果としてプロジェクトの安定性向上につながります。
業務委託の労働時間の問題を防ぐ、Workshipの魅力
ここまで解説してきたように、業務委託における労働時間の管理は、発注企業にとって法的リスクと実務上の難しさを伴うテーマです。
偽装請負の回避、適切な契約書の整備、副業人材への配慮、これらを自社だけで完璧に整えるには、相応の知識と運用コストがかかります。
そこでおすすめなのが、フリーランスとのマッチングサービス『Workship(ワークシップ)』です。優秀なフリーランス人材が6万人以上登録しており、企業が求める人材と出会える場として、1,700社以上の企業様にご活用いただいております。

労働時間トラブルを防ぐ独自の仕組み
Workshipでは、タイムカードや勤怠システムによる労働時間管理を採用していません。稼働時間の証明は、受託者自身が作成した「工数報告書(作業報告書)」の提出によって行われます。
この仕組みにより、発注企業が労働時間を管理・拘束しているとみなされるリスクを回避でき、真の業務委託の関係を保ちやすい環境が整っています。

発注企業にうれしい充実の契約サポート
またWorshipは、3ヶ月単位の月末締め契約で、短期のスポット契約から継続的な業務委託まで、柔軟な契約期間に対応。計画的な発注管理がしやすくなります。
さらに、受注者の責により、稼働開始から14日以内の稼働時間が想定の50%未満だった場合、全額保証が適用されます。そのため、はじめての外注でも安心してスタートできます。
なお、Workship・発注企業・フリーランスの準委任契約による三者間契約であるため、契約の透明性が高く、トラブル発生時も対処しやすい体制が整っています。
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