外注化は危険?メリット・デメリットや外注すべきケースを解説
昨今、働き方改革や雇用リスクの軽減のため、業務を外注する企業が増えています。しかし、どのような業務を外注すべきか、そもそも外注化すべきか迷う方も多いでしょう。
そこでこの記事では「外注化とはなにか」「外注のメリット/デメリット」「外注化すべきケースとその判断基準」「外注と業務委託の違い」を詳しく解説します。
外注化とは
外注とは「会社などで仕事の一部を外部の業者に発注すること」という広い意味合いで使用されており、「外部への発注・注文」の略語です。
つまり、外注化は「業務を外注できるような仕組みづくりをする」という意味です。
ただ、外注は外部の業者へ仕事を発注すること全般を指し、正式な契約形態を指す言葉ではありません。法律上・契約上は「業務委託契約」という言葉が使用されます。
外注化するメリット
外注化するメリットは、大きく以下の3点が挙げられます。
- 社外の高い知見やスキルを活用できる
- 正社員がコア業務に特化できる
- 人件費や設備費などの固定費を節約できる
1. 社外の高い知見やスキルを活用できる
外注したい業務を専門分野とする企業やフリーランスに委託することで、より専門性の高い知識やスキルを活用できます。
また、教育にコストや時間がかからず、すぐに業務に対応できるのもポイント。とくに、社内リソースが限られている中小企業にとっては、大きなメリットになるでしょう。
▼フリーランスを活用した外注方法については以下を参考にご覧ください。
2. 正社員がコア業務に特化できる
業務には、会社に直接利益をもたらす「コア業務」と、その業務自体では利益が生まれづらい「ノンコア業務」の2種類があります。
「総務」「経理」「人事」「コールセンター」などの「ノンコア業務」を外注化することで、社員をより重要な「コア業務」に集中させることが可能となり、事業運営が効率化できるのがポイント。また、担当者を再教育する手間が省け、業務効率化にもつながります。
3. 人件費や設備費などの固定費を節約できる
外注化により「固定費」であった人件費や設備費を「変動費」にすることで、コストが下げられます。臨機応変に委託業務を変更することで、繁閑に応じたリソースの配分を行なうことも可能です。採用活動にあてる費用や人的コストを削減できるのもメリットといえるでしょう。
たとえば、Youtubeをはじめとする動画編集は、機材コストや人件費が高く、動画撮影などのコア業務をひっ迫する可能性が高いため、外注化がおすすめです。
外注化するデメリット
1. 外注の経費(外注費)がかかる
外部の人材や企業に業務を依頼するため、外注の経費(外注費)がかかります。正社員を雇用するよりも費用が大きくなることもあるため、業績や外注先の費用感を見て検討しましょう。
▼外注費について詳しく解説した記事は以下になります。ぜひご参照ください。
2. 認識のすり合わせが難しい
外注先はその業務の専門家ではありますが、自社の社員ではありません。そのため、業務の進め方や成果物の認識に齟齬(そご)が生まれることがあります。外注前に業務に対する認識は正確か、コミュニケーションは取りやすいかを確認しましょう。
3. 新規の外注先を見つけるのに時間がかかる
新規事業の立ち上げや、短期間で成果が求められる場合など、求めるクオリティと予算条件が合致しない可能性もあります。外注先を見極める時間が必要ですぐに外注化することが難しい傾向があります。
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自社は外注化すべき?その判断基準とは
これまでは外注のメリットやデメリットなどを紹介してきましたが「自社は外注すべきかどうかわからない」こともあるでしょう。
ここでは外注すべきか否かの判断を、マトリクス表を使って解説していきます。
外注の適性を判断するマトリクス表
その業務が外注・内製のどちらに適しているのか、具体的な判断基準は以下の2つです。
- コア業務をひっ迫しているかどうか
- その業務の人件費が高いか低いか
人件費が高いかどうかは、定量的に判断することが難しいですが、時給換算などを用いて外注費と比較しましょう。これらの増減が顕著だった場合、外注・内製の判断しましょう。
コア業務をひっ迫している | コア業務をひっ迫していない | |
人 件 費 が 高 い | 外注化 アウトソーシング | 経営判断で選択 |
人 件 費 が 低 い | 業務内容による 判断で選択 | 内製化 インソーシング |
外注化すべき4つの判断基準
1. コア業務をひっ迫している/人件費が高い
業務量が多く、本当にやらなければならないコア業務が追われており、かつその業務の人件費が高い場合は、外注化を推奨します。
2. コア業務をひっ迫していない/人件費が高い
コア業務をひっ迫していないが、人件費が高い場合は経営状況によって判断するべきです。繁忙期だけ外注するなど、時期で考えるというのも一つの手段です。
3. コア業務をひっ迫している/人件費が低い
コア業務をひっ迫しており、人件費が低い場合は業務内容によって判断するべきです。内製化し自社の社員のスキルを底上げするのもひとつの手です。
4. コア業務をひっ迫していない/人件費が低い
コア業務をひっ迫しておらず、人件費が低い場合はコストがかかるという面で外注化するべきではないでしょう。まずは、内製してみてそれから判断すべきです。
外注化と業務委託の違い
一般的に、「外注」というと自社の業務の一部、またはすべてを外部の企業やフリーランスなどに委託することを意味します。
一方で、外注時の契約形態の一つとして、使われる言葉が「業務委託」です。
▼外注と業務委託のちがいをさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
業務委託契約の種類についても押さえておきましょう
外注=業務委託の契約は2種類
業務委託は、民法では「請負契約」と「委任/準委任契約」の2つの契約形態を指します。どちらも法律上の言葉で、実際の契約にも使われるため意味を正確に理解しておくことが大切です。
請負契約 | 委任/準委任契約 |
報酬の対価を成果物に定める契約。労働自体ではなく、成果物に対して報酬が支払われる。成果物にミスがあった場合は、委託を受けた側に補償の責任が発生する | 報酬の対価を業務自体に定める契約。成果物は存在しないため、特別な補償義務などはない。法律に関する業務委託は委任契約、それ以外は準委任契約と呼ばれる |
「請負契約」は成果/納品物に対して報酬を支払う
「請負契約」とは、企業が業務を委託する際の契約形態のひとつで、受任者は依頼された仕事を完成させて納品するまでの業務を請け負い、注文者は完成した仕事・納品物に報酬を支払うことになります。
- 業務の進行などについての指揮命令権は受任者側にあり、注文者が直接業務を管理/監督することは認められていない
- 仕事の完成が目的であり、受任者は納期までに委託された業務を完成させて成果/納品物を注文者に引き渡す義務を負う
「委任契約/準委任契約」は業務自体に対して報酬を支払う
「委任契約」とは法律行為に関する事務を相手に依頼する契約であり、民法第643条に規定されています。また、法律と関係のないものはおおむね「準委任契約」となり、民法第656条に規定されています。いずれも「請負契約」とは違って、成果・納品物を完成させる義務がない契約形態です。
- 「委任契約」は弁護士に訴訟代理を依頼する場合や、不動産業者に土地の売却を依頼する場合
- 「準委任契約」は日常生活において、医師による患者の診察や高齢者介護サービスの依頼などの事務処理が必要となる場合
外注とBPOの違い
業務を外部に発注する外注という言葉の他に、似た意味でBPOという言葉があります。BPOとは「ビジネス プロセス アウトソーシング」(Business Process Outsourcing)の頭文字を取った略語です。
BPOと外注の大きな違いは以下です。
- 外注:自社の単純業務を外部に委託する。
- BPO:業務設計から、細かなトラブルや業務上の課題の分析、改善案の提案と実行・効率化まで行なう
BPOは人手不足/人的リソースの確保といった課題に関して有効な手段の一つとして、近年、多くの企業に取り入れられています。
つまり、単純作業だけが処理できる外注と、業務設計からプロジェクトの指揮までを依頼できるBPOを使い分けることで、雇用のリスクを最低限に抑えて事業運営ができると言えるでしょう。
外注化の需要/将来性
ここでは、アウトソーシングやBPO(Business Process Outsourcing)の利用率、つまり外注市場が大きくなっている現状の説明とその原因を考察します。
以下のグラフは、日本国内のBPO市場規模を、IT系BPO・非IT系BPOごとに集計したものです。
上のグラフを見ると、IT系BPO・非IT系BPOのどちらとも年々徐々に市場規模が拡大していることがわかります。
BPOの活用が増えている背景について、主に以下の要因が影響していると考えられます。
- 人材不足問題の拡大
- 労働契約法改正の影響
- 働き方改革による影響
- 外資系企業による日本市場の参入増加
これらの要因は、大手・中小など企業の規模に関わらず影響しています。リソース不足や雇用をとりまく環境変化により、外注やBPOが増えてきました。
上記を踏まえると、長期的にBPOを活用し、雇用を増やさず低リスクで事業を進める企業が増えていることがわかります。特にIT系の職種は専門的な職務であるため、外注やBPOの需要が非常に高い傾向にあります。
フリーランスに外注する企業も
近年、BPOなど企業への大規模な外注以外にも、フリーランスとして働く個人に外注する企業も増えています。
▲出典:「【ランサーズ】フリーランス実態調査 2021」
2018〜2020年でのフリーランス人口、および経済規模はほぼ横ばいながら2021年に入って急激に増加していることがわかります。リモートワークの普及や副業解禁の流れにより、フリーランスを活用する企業が増えています。
フリーランスに外注するメリットは、コストの低さと専門性の高さにあります。
フリーランスには社会保険料や福利厚生費がかからず、正社員を採用するよりも大幅にコストを抑えられます。また、フリーランスの多くは、ベンチャー企業や大手企業でスキルを磨いた人材であり、希少なノウハウを持っている方も多くいます。
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