準委任の業務委託契約とは?請負や派遣との違いやメリットを解説
社外の人材に業務委託をする場合、複数の契約方式があります。そして依頼できる業務内容や報酬形態は、契約方式ごとに違いがあります。
契約ごとの違いを正確に把握していないと、会社として損をしてしまったり、無自覚に違反的な契約を結んでしまうことも。
そういった事態を避けるために、準委任契約の特徴や、その他の契約方式との違いについて解説します。
業務委託における準委任契約とは?
業務委託で仕事を依頼する際には、複数の契約方式があり、準委任契約はそのうちの1つです。
準委任契約は、自業務の受託者が契約した時間分の労働を提供する契約方式です。そのため委託者は、業務量や成果物ではなく受託者が働いた時間に対して報酬を支払います。
報酬の対象はあくまで労働時間なので、仮に契約した労働時間内に委託者が希望していた業務が完了しなかった場合でも報酬を支払う義務が発生します。
準委任契約とその他の業務委託契約の違い
業務委託契約には、
- 準委任契約
- 委任契約
- 請負契約
以上3つの契約方式があります。また厳密には業務委託契約ではありませんが、派遣契約も業務委託契約と似た契約方式です。
そこで、準委任契約と他3種類の契約方式との違いをそれぞれ解説します。
準委任契約と委任契約の違い
委任契約は、法律に関わる業務を委託する場合に結ぶ契約方式です。
【業務例】
- 確定申告を税理士に依頼する
- 訴訟行為を弁護士に依頼する
それに対して準委任契約は、法律が関わらない業務前半を委託する際に結ぶ契約方式です。
【業務例】
- エンジニアに新規システムの構築を依頼する
- webデザイナーにコーポレートサイトのデザインを依頼する
これらの分類については、民法第643条と656条にて定められています。準委任契約と委任契約の主な違いは以上で、業務内容以外は同様の契約形式と考えて差し支えありません。
準委任契約と請負契約の違い
続いて、準委任契約と請負契約の違いについて解説します。
まずは報酬の対象が異なります。請負契約では、働いた時間ではなく、成果物に対して報酬を支払います。そのため、働いた時間によって報酬額は変わりません。
また請負契約では、受託者側に瑕疵担保責任が発生するため、納品された成果物に誤りがあった場合、受託者には修正する義務が科せられます。準委任契約では瑕疵担保責任が発生しないため、修正対応を強制できません。
しかし準委任契約では、受託者側に業務進捗を報告する義務が発生するため、受託者の業務状況を細かく確認できます。
このように、準委任契約と請負契約、それぞれにメリットとデメリットがあります。
準委任契約と派遣契約の違い
まず準委任契約を含む業務委託契約では、受託者個人と契約を結びます。派遣契約の場合は、派遣会社と契約を結び、適切な人材の派遣を受けてその人材に業務を委託します。
どちらも働いた時間に対して報酬が発生する点は共通ですが、派遣契約の場合は指揮命令権が委託側に委ねられます。そのため業務の進め方などを詳細に指示できます。
準委任契約では指揮命令権がなく、業務指示を行ってしまうと偽装請負と判断され罰則が科せられることもあります。
業務委託契約で準委任を選ぶメリット
準委任契約のメリットについて解説します。
契約期間を調整できる
準委任契約では、委託者と受託者の同意のもと契約期間を決定します。そのため、会社の状況に合わせた契約が可能です。
例えば慢性的な人材不足であれば、正社員人材が確保できるまで長期的に契約できます。反対に、新規事業の立ち上げなど突発的に人材が必要になった場合は、短期的な契約も可能です。
このように会社の状況に合わせて契約期間を調整できることで、無駄な人件費を削減できます。
幅広い業務を依頼できる
準委任契約では、労働時間に対して報酬を支払うため、幅広い業務を委託できます。
請負契約の場合は、成果物に対して報酬が支払うため、委託する業務内容も制限されます。もちろん契約時点で、複数の業務を委託できますが、準委任契約ほど融通が効きません。
準委任契約を結ぶ際、委託者の了承を取ることで、会社内の人材で手が回らない部分を補えます。
教育コストが不要
業務委託では、求めるスキルを持った人材と契約すことで、社内の教育コストを削減できます。
また一般的に業務委託で生計を立てている人材は、社員雇用の人材と比較して高いスキルを身につけている傾向があります。そのため、高度なスキルが必要な専門性の高い業務であっても委託できます。
このように準委任契約では、雇用や教育にかかるコストを、正社員雇用よりも抑えられます。
業務委託契約で準委任を選ぶデメリット
続いて、準委任契約のデメリットを解説します。
業務に対して細かな指示ができない
準委任契約では、正社員雇用や派遣契約とは違い、委託者に対する指揮命令権がありません。
そのため、業務の進め方などについて細かな指示ができません。
契約時点で、業務内容や業務の目的を明確に伝えて、双方に認識のずれが出ないよう注意しましょう。
社内にノウハウが蓄積されない
元々業務に適したスキルを持った人材と契約することになるため、業務の進め方やスキルに関するノウハウは受け取れません。
そのため、社内人材の教育には繋がりません。
単発の事案であれば問題ありませんが、長期的に発生する業務を業務委託者にだけ委託し続けるとコストが必要以上にかかることがあるため、正社員の教育を並行して進めることをおすすめします。
成果物が納品されなくても報酬を支払わなければいけない
準委任契約では、提供された労働時間に対して報酬を支払うため、仮に契約期間内に希望した成果物が納品されなかった場合でも、報酬を支払う義務があります。
また受託者に瑕疵担保責任がないため、納品後の成果物にミスがあったとしても、修正を強制できません。
以上のことから、準委任契約は、契約する上で委託者と受託者の信頼関係が重要になります。
準委任契約に関する責任や権利
準委任契約を結ぶ場合、委託者と受託者双方に複数の責任と権利が関わることになります。
瑕疵担保責任
準委任契約は、成果物の納品ではなく業務の遂行を委託します。そのため受託者側に瑕疵担保責任がしません。
つまり仮に受託者から納品された成果物にミスがあった場合でも、修正を強制できません。
請負契約の場合は、受託者に瑕疵担保責任があるため、修正対応を依頼できます。
指揮命令権
準委任契約の場合、受託者に対する指揮命令権がありません。
そのため、業務に対して細かな指示を出したり、業務の進め方を強制できません。
仮に違反した場合は、違反行為として罰則が科せられます。
善管注意義務
善管注意義務は、民法第644条にて定められた「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」義務です。
受託者がこの義務を怠り履行遅滞・不完全履行などを行った場合は、委託者側に契約解除や損害賠償を請求する権利が与えられます。
報酬請求権
報酬請求権は受託者に与えられる権利です。
委託者の要望通りの成果物が納品されなかった場合でも、業務遂行自体が適切に実施されていれば、委託者は受託者に報酬を支払わなければいけません。
また事故などにより、受託者が業務を遂行できなくなり契約を途中で破棄する場合でも、その時点で発生している報酬は支払わなければいけません。
再委託の禁止
準委任契約の場合、受託者が業務を第三者に再委託することを禁止できます。これにより、情報漏洩や業務の責任が曖昧になることを防止できます。
ただ受託者が委託者に許可を取れば、第三者に業務を再委託できます。
作業報告の受け取り
準委任契約では、受託者に対して作業状況の報告を義務付けることができます。
作業報告は、作業報告書の形式で一定期間ごとに受け取れます。
このように業務の進捗状況を正確に把握することで、業務の遅延や認識のズレがあった場合でも途中で修正できます。
準委任契約を結ぶ際の注意点
準委任契約を結ぶ際にはいくつかの注意点があります。
業務範囲を明確する
これまでに解説したように、準委任契約では委託者側に指揮命令権がありません。
そのため、業務内容や業務範囲を曖昧なまま契約を結んでしまうと、十分な結果が返ってこない可能性が大きくなります。
また業務の遂行が報酬の対象であるため、成果物が納品されなくても報酬を支払わなければいけません。
こういった事態を防ぐために、契約時に業務内容や業務範囲、委託した目的などを伝えるようにしましょう。
また途中で認識のズレがあると判断した場合は、それを伝えて修正を依頼しましょう。
準委任契約でも印紙が必要な場合もある
準委任契約の場合は、基本的に印紙税を収める必要はありません。ですが、第一号文書もしくは第七号文書に該当する契約書を結ぶ場合には、印紙が必要になります。
下記のような契約書を結ぶ場合は、第一号文書に該当します。
- システム開発業務委託契約書
- プログラム業務委託契約書
- ソフトウェア業務委託契約書
また第七号文書は下記の契約書が該当します。
- 代理店契約書
- 特約店契約書
- アフィリエイト契約書
ただ第七号文書については、契約期間が3ヶ月以内でかつ契約更新に関する記載がない場合は対象外となります。
第一号文書については、契約金額によって印紙税が異なります。
【印紙税額例】
契約金額 | 印紙税額 |
1万円以下 | 非課税 |
1~10万円 | 200円 |
10~50万円 | 400円 |
50~100万円 | 1,000円 |
100~500万円 | 2,000円 |
500万~1,000万円 | 10,000円 |
また第七号文書の印紙税は一律で4,000円となります。
準委任契約書の雛形
準委任契約を結ぶ際の契約書は、円滑な業務進行のために必ず必要なものです。
契約書には、下記の内容を記載しましょう。
- 業務の遂行方法
- 契約期間
- 報酬と報酬の支払時期知的財産の帰属
- 禁止事項
- 秘密保持
- 損害賠償
しかしこれらの項目をすぐに網羅すうのは難しく面倒ですよね。
そこで以下の資料から法律に遵守した契約書の雛形をDLできるので、ぜひご活用ください。
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準委任契約で業務委託する人材を探すためには、いくつかの手段があります。
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