業務委託は労災適用の対象?業務委託における労災の考え方を解説
業務委託で人材を活用する企業が増える一方で、「業務中に事故やケガが起きた場合、労災は適用されるのか?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、業務委託は原則として労災保険の対象外です。しかし、働き方や契約の実態によっては例外的に労災が関係するケースや、企業側の責任が問われるケースもあります。万が一のトラブルに備え、社内で業務委託と労災に関する理解を共有しておきましょう。
本記事では、業務委託での労災の考え方や、労災が適用されるケース、事故発生時の対処法、企業が取るべきリスク対策までわかりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
業務委託は原則として労災の対象外

労災保険とは、業務中や通勤中に労働者がケガ・病気をした際、国が治療費などを補償する制度のことです。対象となるのは、企業と雇用契約を結んでいる労働者(正社員・パート・アルバイトなど)に限られます。
一方で、業務委託契約は雇用契約ではなく、発注企業と受託者が対等な立場で業務を請け負う関係です。そのため、原則として労災保険の適用対象には含まれず、業務中のケガや病気については、受託者自身が責任を負うことになります。
ただし、「業務委託だから一切関係ない」とは言い切れません。働き方や契約の実態によっては、例外的に労災保険が適用されたり、発注企業の責任が問われたりするケースもあります。次の章で、具体的なケースを確認していきましょう。
関連記事:業務委託は雇用保険の加入義務がある?ない?企業が知るべき業務委託と雇用の違いやリスク管理を解説
【ケース別】業務委託でも労災が関係する3つのパターン
以下からは、業務委託でも労災が関係する3つのパターンを紹介します。
ケース1.業務委託者が労災の特別加入制度を利用している場合
フリーランスや個人事業主は、労災保険の特別加入制度を利用すると、国の労災保険に加入できます。これまで特別加入の対象は一部の業種・職種に限られていましたが、令和6年(2024年)11月1日からは、企業経由で業務委託として働く人であれば、業種・職種を問わず加入が可能です。以下では、その概要をまとめました。
保険料の目安は、「給付基礎日額(3,500〜25,000円)× 365日× 3/1,000」で算出されます。たとえば給付基礎日額を1万円に設定した場合、年間保険料は約10,950円です。
発注企業は、受託者自身が労災保険に特別加入しているか否かを、トラブル防止の観点から契約前に確認します。具体的には、発注時に「労災保険の特別加入はされていますか?」と確認してみましょう。
出典:厚生労働省-令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました
ケース2.実態が雇用(偽装請負)に近いと判断された場合
偽装請負とは、契約上は業務委託としながらも、働き方の実態が雇用に近く、会社が指示・命令をしている状態を指します。名目上の契約形態ではなく、実際の働き方によって判断されるため、意図せず偽装請負に該当するケースも少なくありません。労働局や裁判所が偽装請負と判断する主な基準は以下の通りです。
- 発注企業が業務の具体的な指示・命令をしている
- 発注企業が勤務時間・勤務場所を管理している
これらの実態が認められると、契約形態にかかわらず「労働者性あり」と判断され、労災保険の適用対象となる可能性があります。その場合、発注企業は労災保険料の未払いや、安全管理義務違反を問われ、行政指導・罰則の対象になる可能性が高くなります。
関連記事:偽装請負とは?業務委託契約で違法となる3つの判断基準と罰則事例を解説
参考記事:TRY-Partners社会保険労務士事務所-業務委託に潜む落とし穴「偽装請負」~副業・フリーランス活用で“労務トラブル”に陥る会社の共通点とは?~
ケース3.発注者の配慮・責任が問われる場合
業務委託を進める際、発注企業が特に注意したい点が安全配慮義務です。安全配慮義務とは、業務に従事する者が安全・健康に働けるよう配慮する義務のことです。
労働者だけでなく、業務委託先の受託者に対しても適用されるケースが増えています。たとえば以下のような状況では、発注企業の責任が問われる可能性があります。
- 発注企業の施設内での作業中に設備の不備が原因でケガが発生した
- 危険を伴う作業に必要な安全教育や設備提供がなかった
- 過度な業務量・納期の強制により、受託者が健康被害を受けた
これらのケースで安全配慮義務違反が認定されると、損害賠償請求(治療費・逸失利益・慰謝料)を求められる場合があります。特に労災保険に業務委託者が加入していない場合、賠償額が高額になりやすい点も注意が必要です。
出典:フリーランス保険組合-もう現場事故で揉めない!業務委託先には「労災保険」を!
業務委託者がケガ・事故に遭った場合の企業側の対処フロー

業務委託者が仕事中にケガをした場合、無視・放置するのは企業の信頼問題に関わります。事故発生後は、以下のステップで対処していきましょう。
1. 状況確認と事実関係を記録する
事故が発生した場合、企業は事故の状況・原因・経緯を速やかに記録・確認する必要があります。発注企業の施設内や指示のもとで事故が起きた場合、安全配慮義務違反が問われる可能性もあるため、早期の事実確認が重要です。
口頭での確認だけでなく、書面やメールで記録を残しておくことが、後々のトラブル対応で重要な証拠となります。また、受託者本人が動揺している場合は、まず安否確認と医療機関への誘導を優先しましょう。
2.業務委託契約書と就業状況を確認する
状況把握と並行して、締結している業務委託契約書の内容と、実際の就業実態を照らし合わせることが必要です。この確認作業が、発注企業の法的リスクを判断するうえでの根拠になります。確認すべきポイントは以下のとおりです。
| 項目 | 確認事項 |
契約書の確認 |
|
就業実態の確認 |
|
3. 損害賠償・見舞金を検討する
事故の原因確認の結果、発注企業側に過失や安全配慮義務違反が認められる場合は、損害賠償の対応を検討する必要があります。賠償の範囲としては、治療費・休業中の逸失利益・慰謝料などが対象となりえます。
一方、法的責任が明確でない場合でも、見舞金や業務復帰支援などの任意の対応を取ることで受託者との信頼関係を維持し、トラブルの長期化を防ぎます。対応を検討する際のポイントは以下の通りです。
対応に迷う場合は、早期に弁護士や社会保険労務士へ相談しましょう。
4. 再発の防止策を練る
事故対応と同じくらい重要なのが、再発を防ぐ仕組みづくりです。単発の対応で終わらせず、契約・運用・保険の観点から見直しを行いましょう。以下のように、原因を切り分けることで、的確な再発防止策につながります。
▼原因整理の基本
▼再発防止策のポイント
一度の事故は、企業の信頼や財務、法的リスクに大きな影響を与えます。「起きてから対応する」のではなく、「起きる前に備える」ことが重要です。
5.業務委託者に公的制度の利用を案内する
労災保険が適用されない場合も、業務委託者本人が利用できる公的制度やサポートが存在します。可能であれば、受託者に対し、特別加入制度や傷害保険の活用を案内・推奨するといいでしょう。案内すると良い、おもな制度・手段は以下の通りです。
関連記事:業務委託契約で第三者に対する損害賠償トラブルを回避する方法と注意点を解説
業務委託における労災リスクを防ぐ契約・運用のポイント
業務委託に関わる労災リスクは、事故が起きてから対処するのでは遅いです。ここでは、発注企業が押さえておくべき契約書の記載事項と、日常的な運用上の注意点を整理します。
1.契約書に入れるべき条項
まずは業務委託契約書に、以下の条項が盛り込まれているかを確認しましょう。
契約書はひな形をそのまま使い回しているケースも多く見られますが、業務内容・就業場所・関係する人数によってリスクの性質が異なります。定期的に内容を見直し、必要に応じて社労士・弁護士に確認を依頼することを推奨します。
NGな運用(指揮命令・勤怠管理など)
契約書の内容が適切でも、日常の運用が実態として雇用に近い状態になっている場合、偽装請負と判断されるリスクがあります。現場の担当者も含めて、以下のNG行為を把握・周知しておくことが重要です。
特に時給・月給での報酬支払いが多い準委任契約では、業務実態が雇用のようになりやすいため注意が必要です。現場のプロジェクトマネージャーや担当者レベルでの日常的なやり取りが問題になるケースが多いため、社内教育・ガイドラインの整備をしましょう。
関連記事:フリーランス新法とは?企業がとるべき対応や罰則などわかりやすく解説
安全配慮の範囲の整理
業務委託契約であっても、発注企業は一定の範囲で安全配慮義務を負うと解釈される場合があります。「雇用していないから義務はない」という認識は誤りであり、特に自社施設内での作業を伴う場合は注意が必要です。発注企業が対応すべき安全配慮の範囲の目安は以下のとおりです。
| 発注企業側の責任・対応が求められるケース |
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| 受託者側の自己責任となるケース |
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業務委託の労災で企業側が知っておくべきリスクと対策
業務委託をめぐる法制度は、近年急速に整備が進んでいます。

特に2024年以降に施行・改正された法律は、発注企業に直接影響するものが多く、早急な対応が求められています。
2024年11月施行|フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)
2024年11月に施行されたフリーランス保護法は、業務委託を活用する企業にとって無視できない法律です。主なポイントは以下のとおりです。
フリーランス保護法は労災保険を直接カバーするものではありませんが、契約内容の明示義務や一方的変更の禁止は、偽装請負リスクの抑止にも寄与します。法律の要件を満たした契約書の整備が、労災トラブルへの備えにもつながります。
2025年以降段階的施行|労働安全衛生法の改正
労働安全衛生法の改正により、業務委託者・フリーランスを含む「労働者以外の者」への安全配慮の範囲が拡大される方向で制度整備が進んでいます。特に注目すべき変更点は以下のとおりです。
出典:厚生労働省-労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)/個人事業者等の安全衛生対策について
業務委託の労災でよくある質問(FAQ)
Q1. 業務委託者が移動中にケガをした場合はどうしたらいい?
移動の内容によって、以下のように発注企業の責任範囲が変わります。
発注企業の指示・依頼による移動中の事故は、安全配慮義務の観点から発注企業が損害賠償責任を問われるリスクがあるため、移動の指示を行う際は事前に保険の有無を確認しておくと安心です。
Q2. 在宅ワーク中に業務委託者がケガをした場合、どう対応すべき?
原則として発注企業の責任は生じませんが、業務との関連性によって判断が異なります。
在宅ワーク中のケガは、発注企業の管理下にある場所・設備で発生したものではないため、基本的には発注企業の安全配慮義務の範囲外と判断されるケースがほとんどです。ただし、以下のような状況では例外的に責任が問われる可能性があります。
- 発注企業が強制的に長時間の業務を課していた結果、健康被害が生じた場合
- 発注企業が用意した機器・ソフトウェアの欠陥が原因でケガが発生した場合
- 実態として雇用に近い管理・指示を在宅でも行っていた場合(偽装請負)
受託者自身が特別加入制度に加入していれば、在宅業務中のケガも補償対象となる場合があります。受託者への特別加入制度の案内は、在宅ワークが多い業務委託でも行うことを推奨します。
Q3. 副業のフリーランスも対象?
条件を満たせば対象になりますが、複数の事業間での給付調整が必要になる場合があります。2024年11月の制度改正により、副業・兼業でフリーランス活動を行っている個人事業主も、一定の条件を満たせば特別加入制度の対象となります。ただし、副業フリーランスの場合は以下の点に注意が必要です。
- 本業が会社員の場合、本業の労災保険と特別加入制度が並存する形になる
- 事故発生時にどちらの業務中だったかによって、適用される制度が異なる
- 複数就業者の給付基礎日額は、全就業先の収入を合算して算定される場合がある
発注企業の立場からは、受託者が副業フリーランスであっても、特別加入の有無を契約時に確認しておくことが望ましいです。
Q4. 発注者が保険料を負担することは可能?
法律上の禁止はありませんが、税務・法的リスクの観点から慎重な対応が必要です。以下のリスクと留意点を把握したうえで判断していきます。
自社の業務委託は大丈夫?業務委託の労災チェックリスト
法改正への対応と日常的なリスク管理を兼ねて、以下の項目を自社の状況と照らし合わせてください。
- 業務委託契約書に安全管理・免責・保険に関する条項があるか?
- フリーランス保護法に準拠した契約内容・書面になっているか?
- 受託者の保険加入状況(特別加入・民間保険)を確認しているか?
- 指揮命令・勤怠管理など、偽装請負に近い運用をしていないか
- 自社施設内で作業する受託者への安全配慮(設備・教育)ができているか?
- 事故発生時の報告フロー・記録体制が社内に整備されているか?
- 発注企業側で請負業者賠償責任保険などに加入しているか?
- 定期的に社労士・弁護士と契約内容・運用の適法性を確認しているか?
法制度の変化に合わせて、「やっていなかったから問題ない」ではなく「今から整える」姿勢で対応することが、企業の信頼と安全を守る最善策です。
事故の状況が複雑な場合や、法的責任の範囲が不明確な場合は、自社だけで判断せず、早期に専門家へ相談することが重要です。相談先の目安は以下のとおりです。
問題が複合的に絡み合っている場合は、社労士と弁護士を組み合わせて対応することも有効です。
参考:請負業者賠償責任保険 | 賠償責任の保険 | 東京海上日動火災保険
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業務委託における労災問題は、契約書の整備・保険の手配・法令対応を自社だけで行うのは、人事・労務担当者にとって大きな負担です。
そこで、フリーランス専門のサービスを介在することでリスクを軽減できます。たとえば、フリーランス・業務委託人材のマッチングサービス『Workship(ワークシップ) 』では、企業が安心して業務委託を活用できる仕組みを標準装備しています。
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2.賠償責任保険が自動適用で、万が一の事故も安心
Workshipを通じた業務委託契約には、賠償責任保険が自動で適用されます。業務中の事故やトラブルが発生した際も、保険によるカバーが用意されているため、発注企業・受託者の双方が安心して業務に集中できる環境が整っています。

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