採用コストの削減方法4つ|内訳や一人当たりの平均単価を紹介
「採用にコストがかかりすぎている…」と悩んでいる企業は少なくないでしょう。実際、従業員一人当たりの採用コストは上昇傾向にあるため、採用コストも年々増加していると考えられます。採用コストを削減することは、経営コストの見直しにも有効です。
本記事では、採用コストの種類や内訳、一人当たりにかかっているコストをふまえ、採用コストの削減方法や注意点について解説していきます。
採用コストとは?種類と内訳
採用コストとは、採用活動にかかったコストの総額です。採用コストを削減する上では、まず採用コストについて理解しましょう。
採用コストには、主に「外部コスト」と「内部コスト」の2種類のコストがあります。種類や内訳を詳しくみていきましょう。
外部コスト
外部コストとは、採用活動にあたって外部に支払う費用のことです。具体的なコストには、下記のようなものがあります。
・求人広告費 ・人材紹介費 ・会社紹介動画の制作費 ・採用パンフレットの制作費 ・採用サイトの制作費 ・採用系ツールの利用料 ・会社説明会等の会場費用 ・内定者研修の外部委託費 など |
外部コストは「どこに」「どれだけ支払っているか」が可視化しやすいコストです。
外部コストは実際どれくらいかかってる?
株式会社マイナビ「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」では、各採用ツールに関する予算と実際のコストについてのデータも公表しています。
利用したサービス・手法 | 予算 | 実際に使ったコスト |
人材紹介 | 503.7万円 | 400.3万円 |
求人広告 | 155.5万円 | 142.1万円 |
ダイレクトリクルーティング | 226.6万円 | 178.9万円 |
求人検索エンジン | 150.5万円 | 139.0万円 |
合同企業説明会 | 166.5万円 | 140.9万円 |
採用ブランディング | 114.6万円 | 88.0万円 |
その他経費 | 121.3万円 | 92.8万円 |
合計 | 770.4万円 | 629.7万円 |
最も高いのは、人材紹介にかかるコストです。人材紹介はダイレクトに採用につなげられる可能性が高いため、多くの企業はそこに多くの予算を確保しています。
内部コスト
内部コストは、社内で発生している採用に係るコストです。主なコストは人件費となり、そのほか下記のようなコストが含まれます。
・採用担当者の人件費 ・選考に関わる人の人件費 ・リファラル採用のインセンティブ ・応募者や内定者への交通費 ・内定者懇親会・入社歓迎会などの交際費 など |
人件費がメインになることから、外部コストのように正確な費用を算出するのが難しい部分でもあります。
一人当たりの採用コストはどれくらい?
一人当たりの採用コストは、従業員一人を雇うためにかかったコストのことです。一人当たりの採用コストは、下記の計算式から算出できます。
一人あたりの採用コスト=採用コストの総額 ÷ 採用人数 |
ここでは、さまざまな観点で一人当たりにかかっている採用コストをみていきます。
【採用形態別】一人当たりの採用コスト
株式会社リクルートが運営する就職みらい研究所「就職白書2020」によると、2019年度の新卒・中途採用における一人当たりの採用コストは下記のとおりです。
新卒一人当たりの採用コスト | 93.6万円 |
中途一人当たりの採用コスト | 103.3万円 |
なお、2018年度は新卒で「71.5万円」、中途で「83.0万円」であり、一人当たりの採用コストは増加傾向にあることがわかります。
【企業規模別】一人当たりの採用コスト
株式会社マイナビが運営するマイナビキャリアリサーチLabによる「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」によると、企業規模別の一人当たりの採用コストは、下記のとおりです。
3〜50名 | 21.4万円 |
51〜300名 | 404.万円 |
301〜1,000名 | 35.9万円 |
1,001名 | 44.6万円 |
企業規模が大きくなるほど、一人当たりの採用コストは高くなる傾向にあります。しかし、51〜300名の中小企業は、1,001名以上の大企業に近い採用コストです。
中小企業の場合は母集団形成がうまくいかずに応募人数や採用人数が少なくなりやすい点で採用単価が高くなっているケースも少なくないでしょう。
【職種別】一人当たりの採用コスト
同じく「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」によると、職種別の一人当たりの採用コストは下記のようなデータとなっています。
営業 | 33.7万円 |
企画・経営 | 33.9万円 |
管理・事務 | 32.3万円 |
販売・フード・アミューズメント | 27.3万円 |
美容・ブライダル・ホテル・交通 | 26.4万円 |
医療・福祉 | 28.4万円 |
保育・教育・通訳 | 26.2万円 |
クリエイティブ | 32.9万円 |
WEB・インターネット・ゲーム | 38.0万円 |
コンサルタント・金融・不動産専門職 | 35.0万円 |
公共サービス | 52.6万円 |
ITエンジニア | 38.8万円 |
電気・電子・機械・半導体 | 29.9万円 |
建築・土木 | 33.1万円 |
医薬・食品・化学・素材 | 31.6万円 |
技能工・設備・配送・農林水産 | 31.7万円 |
公務員となる公共サービスが最も高い数値ですが、一般企業は概ね20〜30万円台が相場となります。
【採用手法別】一人当たりの採用コスト
厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査結果の概要」によると、採用手法別にみた採用1件あたりにかかる平均単価は、下記のとおりでした。
正社員 | 非正社員 | |
民間職業紹介事業者 | 85.1万円 | 19.2万円 |
求人情報誌・チラシ | 11.2万円 | 7.7万円 |
インターネットの求人情報サイト | 28.5万円 | 10.8万円 |
インターネットの求人情報まとめサイト | 6.4万円 | 3.2万円 |
スカウトサービス | 91.4万円 | 44.0万円 |
新聞広告・屋外広告 | 7.1万円 | 4.5万円 |
SNS | 0.9万円 | 0.2万円 |
知り合い・社員等からの紹介(縁故) | 4.4万円 | 3.4万円 |
自社HP等からの直接応募 | 2.8万円 | 2.7万円 |
人材紹介やスカウトサービスといった外部サービスは、求める人材にダイレクトにアプローチしやすい手法です。サービスの利用に料金が発生したり、採用が確定すると手数料を支払ったりする必要があるため、採用手法の中でも採用コストが高額になりやすいといえます。
採用コストを削減する方法
採用にコストをかけすぎてしまうと、経営をひっ迫してしまうリスクがあります。ここでは、採用コストを削減する方法を詳しくご紹介します。
採用手法を見直す
一人当たりの採用コストでも挙げたように、採用手法によってかかるコストは異なります。まずは、採用手法を見直し、採用課題や目的に合った手法がないかを再検討してみましょう。
求人サイトは母集団形成に役立つため、コストの最適化を図りつつ継続して活用することがおすすめです。ただし、求人媒体の見直しは必要でしょう。求人媒体によってユーザー層も変わってくるため、求める人物像とマッチする媒体を利用することがポイントです。
また、採用コストがかかりにくい手法を活用することも有効です。採用コスト抑えられる手法には、以下のようなものがあります。
ダイレクトリクルーティング | ターゲットとなる人材に直接アプローチする方法(例:スカウト型サービスの利用) |
ソーシャルリクルーティング | 自社SNSや採用サイトを活用した母集団形成・応募者獲得 |
リファラル採用 | 従業員の紹介・推薦による母集団形成・応募者獲得 |
アルムナイ採用 | 退職した元従業員を再雇用 |
SNSや採用サイトの活用、リファラル採用のような自社採用の割合が増えるほど、採用コストも削減できます。
一方で、スカウトサービスを利用したダイレクトリクルーティングのように、採用手法としてはコストがかかってしまうものもあります。しかし、ミスマッチが少ない採用が実現できる点で、結果的に採用コストの抑制に効果的です。
採用工数を見直す
採用工数や選考プロセスの見直しは、内部コストの削減に有効です。採用工数を削減すれば、人員を減らさずとも採用コストを抑制できます。採用工数を削減するための具体的な方法は、下記のようにさまざまです。
・説明会のオンライン開催、開催頻度の縮小 ・選考回数の見直し ・オンラインツール、採用管理ツールの活用 ・外部リソースの活用(採用代行など) |
採用工数を見直すポイントは、業務効率化にあります。しかし、そもそも採用に割ける人員が少ないといった場合には、採用の質を低下させないためにも外部リソースを活用するなどして、社内の人員が採用のコア業務に専念できる環境を整えることも必要です。
ミスマッチを軽減する
採用コストを削減する上で、ミスマッチを軽減することも重要なポイントです。ミスマッチが生じると内定辞退が発生するだけでなく、早期離職の原因にもつながります。
内定辞退が出てしまうと採用目標が達成できず、また新たなコストがかかってしまいます。さらに早期離職は育成コストの損失にもなり、その影響は大きいものです。
ミスマッチを軽減するには「求める人物像」をしっかりと明確化することが重要です。その上で、ターゲットにアプローチできる採用手法を検討しましょう。また、入社前・入社後のフォローをしっかり行うことは、早期離職を防ぐために不可欠です。
採用マーケティングに取り組む
自社採用を成功させるためには、採用マーケティングに取り組むことも大切です。採用マーケティングは、いわば採用面でのブランディングです。積極的な情報発信により、自社の存在や雰囲気、魅力を知ってもらうことが大きな目的となります。
採用マーケティングに成功すれば、応募者数の増加やミスマッチのない採用が実現します。とくに、中小企業ではこうしたマーケティングやブランディングが採用成功とコスト削減の鍵となるでしょう。
採用コストを削減する際の注意点
採用コストはただ削減すれば良いというものではありません。削減に取り組む際は、下記のポイントに注意は必要です。
採用の質を下げないようにする
採用の質は「求める人材が採用できているか」「候補者や採用者と自社のマッチ度が高いか」という点にあります。採用コストを削減したことで採用の質が下がっては本末転倒です。
採用コストは採用の質を高めるために不可欠なものであるため、必要な部分まで無理に削減しないよう注意しましょう。採用コストの削減を検討する際は、各採用手法の「費用対効果」や「採用への影響度」を見極めることが大切です。
採用担当者の負担を増やさない
採用担当者の人数を減らせば、単純に採用コストが削減できます。また、採用で使っているツールを解約したり、自社採用の割合を増やしたりすることでもコストを削減できるでしょう。
しかし、その結果担当者の負担が増加してしまうと、採用の質低下につながります。業務過多な状況がモチベーション低下の原因となり、採用担当者自体が離職してしまうおそれもあるでしょう。
そのため、採用コストを削減する際はしっかりと現場の担当者の声も聞き、負担が増えない方法を検討することが大切です。
まとめ
採用コストを削減することで、経営コストの最適化につながります。しかし、採用コストを無理に削減してしまっては、採用の質が低下し、組織のパフォーマンス低下の原因となりえます。
採用コストを削減する際は、単にコストを削減するのではなく「最適化する」視点を持つことが大切です。必要なコストは削減せず、採用に効果的な施策やツールにコストを投じることで、採用の効率化や質向上につながるでしょう。
まずは、自社の採用コストを明らかにし、その内訳や費用対効果を確認しながらコストの削減に取り組んでみてください。
