中途採用に即戦力は求めすぎ?即戦力を確保するための戦略や即戦力化のポイントとは
中途採用では、基本的に即戦力の採用を目的とします。しかし、人材獲得競争が激化する現代では、理想の即戦力人材を確保するのは簡単ではありません。なかには、「中途採用での即戦力の獲得は無理」「即戦力は求めすぎなのでは」と感じている企業も少なくないでしょう。
本記事では、中途採用における即戦力の確保について、うまくいかない原因や即戦力を確保する方法、入社後に活躍してもらうためのポイントなどをご紹介します。
中途採用における即戦力とは
即戦力とは、入社後すぐに業務に貢献できるスキルや経験を持っていたり、成果を出せたりする人材のことです。業務遂行に必要な知識やスキルだけでなく、高いコミュニケーションスキルや環境への適応力といったポイントも即戦力の要素に含まれます。
一般的な中途採用では、未経験の人材も採用の対象です。即戦力を求める場合は、一定上のスキルや経験を持つ人材を対象とし、より限定的な採用を行っていく必要があります。
中小企業こそ即戦力が必要
中小企業の多くは、リソースが不足している状態です。即戦力となる人材が入社してくれれば、不足するリソースを早期に補えるでしょう。かつ、育成にかかるコストも最小限に抑えられるため、現場の負担も軽減されます。リソースに限りがある中小企業こそ、短期間で業務効率を向上させるために即戦力の確保が求められるのです。
中途採用に即戦力は求めすぎ?即戦力の採用と活用がうまくいかない4つの原因
中途採用に即戦力は求めすぎとの声が聞かれることもありますが、中途人材は一定の社会人経験を積んでおり、異業種や異職種からの転職でない限りは即戦力として期待できます。
しかし、中途採用で即戦力を求める企業が採用に失敗するケースもあります。その原因として、下記4つが挙げられるでしょう。
・採用条件が高すぎる ・実力を適切に見極められていない ・適切なフォロー・サポートをおこなえていない ・中途採用者が社風や職場に馴染めていない |
採用条件が高すぎる
即戦力を求めるあまり、高すぎる採用条件を設定していては、そもそも応募がこないといった事態になりかねません。たとえ条件にマッチする人材がいたとしても、そうした人材を確保できる可能性が高いのは大手企業でしょう。
なぜなら、中小企業は大手に比べて報酬・待遇面が劣る場合が多く、さらには知名度が低いためそもそも求人を見つけてもらえない可能性があるからです。そもそも応募がこないと即戦力はおろか、人材を獲得できません。
実力を適切に見極められていない
即戦力と期待して採用した人材が、期待通りの実力ではなかったというケースも珍しくありません。この原因として、企業側と求職者側のいずれかあるいは双方に原因が可能性が考えられます。
企業側に考えられる原因 | 求職者側に考えられる原因 |
・本来の実力を見極められなかった ・中途人材ならみんな即戦力になると思い込んでいる ・保有している資格だけで判断し、実績や実態を把握しなかった | ・経歴や実績を誇張して伝えている |
求職者側に原因があった場合でも、それは面接時に見極めることが可能です。企業側は選考時に書類や求職者の自己PRなどを鵜呑みにせず、深掘りして見極めていくことが求められます。
「中途人材なら即戦力であるのが当たり前」と思い込み、とりあえずで採用しないよう注意しましょう。
適切なフォロー・サポートをおこなえていない
即戦力となる人材であっても、環境が変われば本来の実力を発揮するまでに時間がかかる場合があります。なぜなら、業種や職種が同じであっても、企業によって仕事の進め方や使うツールなどは異なるからです。
即戦力であることに期待しすぎてフォローやサポートを怠っては、なかなか仕事が覚えられずに業務効率が低くなってしまったり、実力を発揮できなくなったりして、企業側の期待値とギャップが生じてしまいます。
中途であっても環境が変われば新入社員と同じであると認識し、実力を発揮してもらうためにもフォローやサポートは怠らないようにしましょう。
中途採用者が社風や職場に馴染めていない
社風や職場環境に馴染めない、合わない状態では、本来の実力を発揮できません。それどころか、早期離職につながるおそれもあるでしょう。
中途採用者が働きやすい環境を整えてこそ、即戦力として活躍してもらえます。そのためにも、入社後のフォロー・サポート体制を整えることはもちろん、選考の段階で社風にマッチするかを見極めることが大切です。
中途採用で「即戦力がいるわけない」は間違い
中途採用でうまくいかない状態が続くと、「即戦力になれる人はいるわけない」という考えに至ってしまう企業もあるかもしれませんが、それは間違いです。
即戦力が確保できない原因としては、以下のようなことが考えられるでしょう。
・即戦力となる優秀な人材は大手や条件が良い企業に流れている ・自社の考える「即戦力」を定義できていない |
即戦力として早期に成果を出すような人材は、転職市場で需要が高い存在です。中小企業の場合、大手企業や自社よりも条件が高い競合企業に人材を取られてしまっている可能性があるでしょう。そのせいで、自社の採用範囲に即戦力となる人材が入ってこず、即戦力がいないと感じてしまうのです。
一方で、即戦力に漠然としたイメージしかないことで、実際には即戦力となる可能性がある人材を確保できているのに、活用し切れていないケースもあるでしょう。
中途採用で即戦力を確保する方法
では、中途採用で即戦力を確保するにはどうすれば良いのでしょうか。具体的な方法を紹介していきます。
求める人物像を明確にする
まずは自社が求める「即戦力」をしっかりと定義し、求める人物像を明確にすることが重要です。経営戦略の達成に必要な人材要件や・自社で活躍しているハイパフォーマーの特徴から、自社の求める「即戦力」となる要件を定義してみましょう。
その上で、以下のようなポイントも明確に定義していきます。
例 | |
必要なキャリア経験 | ・BtoB営業経験◯年以上 ・マネジメント経験◯年以上 ・新規企業立ち上げの経験 など |
職務能力要件 | ・職務遂行に必要な資格の有無とそのレベル ・ツールの使用経験 など |
職務遂行に求める人物像や適性 | ・コミュニケーション能力が高い人 ・責任感を持って誠実に仕事に取り組める人 など |
上記のようなポイントを言語化することで、求職者も企業が求める人物像をイメージしやすく、自分に当てはまっているかを判断しやすくなります。
適切な採用チャネルを利用する
中途採用では、下記のようにさまざまな採用チャネルがあります。
・転職サイト ・転職エージェント、人材紹介 ・ヘッドハンティング ・SNS ・リファラル など |
採用チャネルによって、特性や得意・不得意が異なります。
たとえば、転職サイトはより多くの求職者にリーチできますが、大手企業と競合しやすかったり、求人掲載のコストが高かったりします。また、リファラル採用であれば、転職潜在層にリーチでき、ミスマッチを抑えられるといった特徴があります。
かかるコストとその費用対効果、求める人材の特徴などをふまえ、適切な採用チャネルを利用することも、採用活動の質を高め、効率的に進めるためのポイントです。
即戦力人材にふさわしい報酬条件を設定する
即戦力となる優秀な人材は引く手あまたな存在であり、多くの企業が採用するために良い報酬・待遇条件を設定しています。
報酬や待遇といった条件は、応募先や入社先を選ぶ際の判断材料となる要素です。即戦力となる優秀な人材を獲得するには、見合った報酬が必要となります。
入社段階での報酬だけでなく、昇給・昇格ペースや評価基準を伝えることもポイントです。入社時点では競合より報酬が低くても、将来的に早く昇給・昇格できる場合は、有利になる可能性があるでしょう。
自社の情報を正しく伝える
業務内容や求める人物像などの情報を正しく伝えられていないことで、お互いの即戦力の認識にギャップが生じてしまう場合もあります。
企業側の伝える情報が十分でないことで、求職者が自分にマッチした求人であるかの見極めができず、いざ入社した際にギャップが大きく能力を発揮できないといった事態になりかねません。
求職者側でスキル面やカルチャー面などが企業にマッチするかをある程度判断できるようにすることで、採用活動も効率化できます。
中途採用で即戦力人材を見極める方法
選考時に即戦力であるかを見極めるには、以下のようなポイントをチェックしましょう。
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スキルの高さや実績の豊富さも重要ですが、主体性や成長意欲、適応力や明確なキャリアプランがあるかといったポイントにも着目しましょう。どんなにスキルが高くても主体的に仕事に取り組まなかったり、適応力に欠けていることで新しい職場のやり方を覚えなかったりしては、即戦力として不十分です。
そうならないためにも、面接時に相手をしっかりと深掘りし、本質を見抜くことが重要です。この点は、採用担当者や面接者のスキルが問われます。
中途採用の人材に即戦力として活躍してもらうためのポイント
採用した人材に即戦力として活躍してもらうには、企業側の配慮も大切です。ここでは、企業が意識すべき3つのポイントをお伝えします。
適切な配置をおこなう
即戦力として活躍してもらうには、スキルや経験が十分に発揮できるポジションに配置することが重要です。前職の経験が活かせる場では、新しいやり方やルールを覚えるだけで後はすぐに実践できるようになるでしょう。
中途採用では基本的に職種ごとに求人を出すためこの点でミスマッチが生じることは少ないかもしれません。しかし、その中でも最大限実力を発揮してもらうには、より適性やスキル、経験にマッチした業務を任せることがポイントです。
フォロー・サポート体制を整える
なんのフォローもなく、いきなり新しい環境で仕事を丸投げしても実力は発揮できません。企業によって独自のルールがあったり、仕事の進め方が違ったりする場合もあるため、その点のフォローはしっかり行う必要があります。
また、職場に慣れてもらうため、そしてさらなる即戦力化を目指し、定期的な1on1ミーティングにより持続的なフォローアップを行うこともポイントです。こうしたフォローやサポートがあることで新しい環境での不安も軽減され、企業に定着して戦力として貢献してくれるようになります。
プレッシャーを与えない
「中途人材=即戦力」と思い込み、いきなり高い目標を設定したり、成果を出すよう圧力をかけたりしないよう注意しましょう。いくら実力があっても、環境や新しい仕事のやり方に慣れないうちは、順調に目標を達成したり、成果を出したりするのは簡単ではありません。プレッシャーを与えてしまうと、ストレスから早期離職につながるおそれもあるため要注意です。
まとめ
中途採用では未経験者を対象としない限りは、基本的に即戦力の採用に期待できます。しかし、ひとくちに即戦力といっても、企業がどの程度のスキルや経験を求めるかによってその定義が変わってきます。
「即戦力の採用は無理」「即戦力なんているわけない」と感じている場合、自社の求める即戦力が定義できていないことでそう感じてしまったり、即戦力の採用がうまくいっていなかったりする可能性が考えられます。
今一度、自社が求める即戦力とは何かを考え、今回ご紹介した採用方法やポイントなどを押さえて中途採用に取り組んでみましょう。