リモートワーク導入の手順とは?必要となる設備や課題解決も紹介
さまざまな働き方に対応するためにも、リモートワークの導入が必要なケースは少なくありません。しかし、どのような手順で導入していくのかわからないことも多いでしょう。
そこで今回は、どのようにリモートワークの導入を進めていくべきか具体的にご紹介します。導入時に必要となる設備や想定されるトラブル、それぞれの解決法についても確認していきましょう。
記事の内容・結論
- リモートワークを導入することで、企業側は生産性の向上や交通費の削減、オフィスのコストダウンなどのメリットを得られる
- 社員側にとっては、自分に合う働き方の実現や通勤負担の軽減、育児や家事との両立などのメリットが得られる
- リモートワークを導入する際には通信設備や作業環境を整えるために多大なコストがかかるので、国や自治体の助成金の利用も検討する
リモートワークを導入するメリット
リモートワークを導入することで企業側も社員側もメリットを得られますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
企業側のメリット
リモートワークを導入すると、企業側には次の5つのメリットが得られます。
- 生産性が上がる
- 交通費の支給額の削減
- オフィスのコストダウン
- オフィスから遠方の人材を採用できる
- 企業イメージの向上
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
生産性が上がる
通勤は社員の体力を消耗します。
リモートワークを導入することで、社員は体力を消耗せずに仕事をスタートできるので、生産性の向上を期待できるでしょう。
交通費の支給額の削減
通勤にかかる交通費を負担している企業は少なくありません。
完全リモートワークを導入するのであれば、交通費を支給する必要がなくなり、会社の負担も大きく軽減します。
また、週に1回、2回通勤日を設ける場合でも、通勤日数が減るので交通費の負担が減るでしょう。
オフィスのコストダウン
リモートワークを導入すれば、大きな社屋が不要になることもあります。
オフィスを借りている場合なら賃料の削減、所有している場合でも維持費の削減に繋がるでしょう。電気代や警備費用などの削減も叶います。
オフィスから遠方の人材を採用できる
従来のようにオフィスで働くという方式では、優秀な人材であっても遠方に住んでいる場合は採用することができません。
しかしリモートワークを導入することで、インターネット環境さえあれば、世界中どこに住んでいる人であっても社員として採用することができます。
企業イメージの向上
リモートワークを導入することで、社員はより自由な働き方を選択できるようになります。
企業側は「自由な働き方ができる職場」という評価を獲得できることから、企業イメージが向上し、より優秀な社員が集まってくることも期待できるでしょう。
社員側のメリット
リモートワークの導入により、社員が得られるメリットも少なくありません。ここでは、以下の4つのポイントについて紹介します。
- 多様な働き方が可能になる
- 通勤のストレスがなくなる
- 衣服費を削減できる
- 育児・介護をしながら仕事がしやすくなる
多様な働き方が可能になる
自宅やコワーキングスペースなどのさまざまな場所で働けるようになります。
また、会社によっては時間配分の自由度が広がることもあるでしょう。
通勤のストレスがなくなる
通勤する際に乗車する電車やバスなどの公共交通機関は費用に混雑するため、利用者にとってはストレスフルな状況です。
しかし、リモートワークの導入により通勤が不要になると、混雑した電車やバスに乗る必要もなくなるため、ストレスは大幅に解消されるでしょう。
衣服費を削減できる
服装にこだわらない職場であっても、清潔な印象を与えるためにはシーズンごとに衣服を整える必要があるため、ある程度のコストはかかります。
しかし、リモートワークを導入すれば、オフィス用の衣服にかかるコストも削減可能です。
育児・介護をしながら仕事がしやすくなる
職場と家庭が同じ場所になることで、育児をしながら、あるいは介護をしながら働くことが可能になることもあります。
待機児童数が多く保育園を利用できない場合や、自宅での介護が必要な家族がいる場合、リモートワークは仕事を続けるための良い手段となり得るでしょう。
リモートワーク導入の手順
リモートワークの導入は、次の手順で進めていきましょう。
- 目的と目標を明確にする
- 人事評価制度と勤怠管理制度を構築する
- ICT環境を整備する
- セキュリティ対策を実施する
- 社員向けの講習会を開催する
- 定期的に評価する
1.目的と目標を明確にする
何のためにリモートワークを導入するのか、また、リモートワークを導入することでどのような目標を達成したいのかを明らかにしておきます。
例えば「社員の通勤負担の解消」を目的として「週2回のリモートワークの実現」を目標とする他、「社員のアウトソーシングの実現」を目的として「人件費削減」を目標とする、などが挙げられるでしょう。
2.人事評価制度と勤怠管理制度を構築する
リモートワークを導入すると、人事評価の判断基準が「仕事の成果」だけになってしまう可能性があります。
成果を出せる社員にとっては有利な環境となりますが、他の社員をサポートすることや業務調整などの成果として、見えない部分で会社に貢献していた社員にとっては不利な環境になるかもしれません。
公平な評価を実現するためにも、リモートワークに適した人事評価制度を構築する必要があるでしょう。
また、勤怠管理もリモートワークに適した制度が必要です。タイムカード代わりのアプリの導入も検討し、社員が今までと同じように勤務でき、評価される環境を作っていきましょう。
3.ICT環境を整備する
社員がPCを所有しているか、また、所有するPCが仕事に適しているかなどを検討する必要があります。
遠隔でデスクトップを操作できる「リモートデスクトップ」や、テレワークで働く社員に割り当てる「仮想デスクトップ」、クラウド上で提供されるアプリケーションに社内外からアクセスして操作する「クラウドアプリケーション」などのリモートワークならではのツールも導入を検討しましょう。
その他にも、有料ソフトウェアを利用している場合は、自宅のPCでも利用できるようにアカウントを増やす必要があります。
また、自宅にPCがない社員のために、会社がPCを支給しなければならない場合も。しかし、自宅にPC環境が整っていない人だけにPCを支給するのでは、不公平を招く恐れがないとは言えません。
PC環境が整っている人と整っていない人の間で不公平が生じないためにも、自宅のPCを使う人には、周辺環境の強化に使用できる補助金等を支給するなどの施策も検討しましょう。
4.セキュリティ対策を実施する
自宅のパソコンやインターネット環境がセキュリティ対策を行っていない場合、機密情報が漏洩するリスクが高いです。
各社員のPCにウイルス対策用のソフトウェアを導入する、さらにはパスワードの管理方法を徹底するなど、セキュリティ面の対策を行いましょう。
また、フリーWi-Fiを利用することで重要な情報が抜き取られる可能性もあります。カフェや公共施設などでフリーWi-Fiを利用して仕事を行わないなど、社員一人ひとりのセキュリティ意識を高めるべきです。
5.社員向けの講習会を開催する
PC環境の整備やセキュリティ対策などを行った後で、リモートワークの導入による新しい働き方、つまり、仕事の手順や報告の手順、タイミングなどについての講習会を開催します。
このタイミングで、各家庭におけるICT環境の調整やセキュリティ対策についても、今一度詳しく説明しましょう。セキュリティ対策については専門の講師を呼ぶなどして、各社員の意識を高めることも有効です。
従業員一人の軽率な行為から、会社の機密や個人情報が漏洩する可能性もあるので、時間と手間をかけてセキュリティ対策の意識徹底を図りましょう。
6.定期的に評価する
ICT環境やセキュリティ対策、勤怠管理、人事評価制度などがうまく機能しているのかを定期的に調べ、評価する必要があります。
問題発見と改善案の提案、改善策の実施を繰り返し行い、より良い業務環境の構築を目指しましょう。
リモートワーク導入時に必要となる準備
リモートワークを導入する前に必要な準備は、主に次の3つです。
- 労務管理の準備
- 情報通信システムの準備
- 作業環境の準備
労務管理の準備
まずはじめに、労働時間をどう評価するか定めなければなりません。
従来の労働時間制にするのか、それとも事業場外みなし労働時間制、あるいは裁量労働制にするのかなど、社員の意見も取り入れながら決定していきます。
また、労災認定の状況についても検討が必要です。私的行為が原因である災害については業務上の災害とはなりませんが、業務起因性、業務遂行性の要件を満たせば労災保険給付の対象となるでしょう。
情報通信システムの準備
情報通信システムとしては、自宅のPCにVPNシステムを利用するか、認証用USBキーを差し込んで仮想シンクライアント環境を構築するかのいずれかが一般的です。
認証用USBキーを用いるときは、費用はかかるもののVPNよりも高いセキュリティ環境を構築できるでしょう。
業務に用いる電話に関しても、会社用の携帯電話を支給するなどの準備が必要です。内線で受信した電話を携帯電話に転送するなど、プライベートの電話と分ける方法を検討していきましょう。
なお、会議についてはZoomやGoogle Meetなどの無料サービスでも対応できるので、事前に社員に利用アプリを通知し、インストールするように促してください。
作業環境の準備
PCやFAX、机、椅子などの環境を自宅やコワーキングスペースに整えなくてはいけません。
また、照明や採光、騒音などは厚生労働省の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に準じ、社員の健康を損なわないように配慮することが必要です。
リモートワーク導入時に起こり得るトラブルと解決策
リモートワーク導入時にはさまざまなトラブルが起こることがあります。
起こり得るトラブルと解決策を確認しておきましょう。
トラブル | 解決策 |
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費用負担先をどこにするかで揉める | 費用の負担先をあらかじめ明確にしておく |
プライバシーを侵害する可能性 |
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長時間労働になる可能性 | 夜間や休日のアクセス制限などを設ける |
メンタルの不調が生じる可能性 |
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費用負担先をどこにするかで揉める
インターネット環境の調整や拡充のための費用を、どこまで会社が負担するのかが問題になることがあります。
例えばMicrosoft Officeアプリを自宅のPCに導入していない場合、会社に請求できるのかなどが争点になることもあるでしょう。
また、リフォームをした、家具を買ったときなどの費用負担はどこになるのかなども問題になることがあります。事前に考え得る費用発生のケースと負担先を決めておくことで、トラブルを回避していきましょう。
プライバシーを侵害する可能性
常時PCのカメラ機能をONにするように会社が求めるのはNGです。
また、リモート会議が多すぎて本来の業務ができないケースや、本来ならばプライベートの時間帯を会社が過度に管理することも、プライバシー侵害の問題となります。
リモート会議は最低限にするなどして、社員のプライバシー保護に努めましょう。
長時間労働になる可能性
従業員によっては仕事の区切りがつけられず、長時間労働になってしまう可能性もあります。
夜間や休日にはアクセスできないようにするなどの調整も必要になるかもしれません。
メンタルの不調が生じる可能性
誰とも会わずに一人で黙々と作業することで、社員のメンタルが不調になる可能性もあります。
定期的に出勤を組み込んだり、カウンセリングサービスを利用できるようにすることで、社員の心のケアも実施していきましょう。
リモートワークの導入で受けられる助成金
リモートワーク(テレワーク)を導入する際には、さまざまな費用がかかります。
国の助成金制度の中にはリモートワーク導入に利用できるものもあるので、ぜひ積極的に活用していきましょう。
働き方改革推進支援助成金< 旧:時間外労働等改善助成金(テレワークコース) >
時間外労働を制限し、ライフワークバランスを取りやすくするためのリモートワーク導入に関しては、「働き方改革促進支援助成金」を利用できることもあります。
なお、助成金の支給額は、実施した取組や成果目標の達成有無によって異なる点を留意しておきましょう。
IT導入補助金
特定のITツールを企業側が導入する際には、「IT導入補助金」が適用され、補助金を受給できることがあります。
資本金や従業員の人数によっても補助金額は異なりますが、最大450万円まで受給可能です。
まとめ
リモートワークを導入することで、会社側にとっては生産性の向上や交通費削減などのメリットが得られます。
また、社員にとっても通勤負担減や介護・育児との両立などのメリットを享受できるでしょう。
しかし、業務形態を根本的に変えていくためには、勤怠管理や情報通信システムの変革など多方面にわたる準備が必要です。国の助成金制度なども活用しながら、リモートワークの導入を進めていきましょう。
リモートワークの導入に際し、優秀な人材を採用したい場合にはWorkshipにご相談ください。
Workshipは、フリーランスと企業とをつなげる人材マッチングサービスです。さまざまな職種のフリーランスが登録しており、その数は30,000人を超えています。
企業側は募集の掲示だけでなく候補者へのスカウトも可能なので、リモートワークを取り入れながら優秀な人材を採用していきたいという場合には、ぜひこちらより資料をご覧ください。