
専門家が執筆する記事を強みに、月間2,600万人が訪れる総合情報サイト「All About」。2024年には、読者がファイナンシャルプランナーへ無料で相談できる「All About家計相談所」をローンチしました。立ち上げ当初は、新しい分野ゆえの知見不足など、新規事業特有の課題に直面することもあったといいます。
その壁をどう突破したのか。メディア事業部 事業開発部 マネジャーで、「All About」の編集者でもある須藤さんに、課題を乗り越えた方法やフリーランス人材を採用するメリットについて伺いました。
この記事の要点
- フリーランス人材の活用により、柔軟な連携が可能に
- 新規事業ならではのナレッジ不足を即戦力でカバー
- 類似事業の経験を重視し、ミスマッチを防止
立ち上げ後に直面した、外部委託の壁
ーーまず、オールアバウト様の事業内容とメディア「All About」の特徴を教えてください。
オールアバウトグループは、専門家が各分野の情報を発信する総合情報サイト「All About」をはじめ、コンテンツマーケティングプラットフォーム「PrimeAd」や日本最大級のお試し買いサービス「サンプル百貨店」など、暮らしに密着したサービスを多角的に展開しています。
中でも、2001年に誕生した「All About」は、20年以上にわたり運営を続け、月間2,600万人が訪れる国内有数のWebメディアとして親しまれています。ファイナンシャルプランナーや料理研究家、美容アドバイザーなど900名の「ガイド」と呼ばれる専門家が執筆する記事を強みに、料理、健康、ファッション、マネーなど、日々の生活に関わる1,300のテーマをカバーしています。
「All About」と言えばライフスタイル領域のイメージが強いですが、実はマネーコンテンツも高い人気を誇ります。特に「マネープランクリニック」は、経験豊富なファイナンシャルプランナーが記事上で読者のお金の相談に答える看板企画で、毎月100件近い応募が寄せられるほどの支持を集めています。
ーー2024年8月に無料家計相談サービス「All About家計相談所」を立ち上げられたそうですね。
サービスを始めた背景には、お金に関する情報を求めるユーザーの行動変化があります。これまでは記事を読み、ご自身で解決策を見つける方が大半でした。しかし、物価高や年金不安、投資への関心の高まりを受けて、「専門家に直接相談して、すぐ答えを知りたい」「知識を得るだけでなく行動につなげたい」と考える人が増えてきました。
そこで、記事を読んで「今すぐ相談したい」と思ったその瞬間に、そのままファイナンシャルプランナーへ相談できる仕組みをつくり、お金や家計の悩みを記事から相談へとシームレスにつなげるために立ち上げたのが、「All About家計相談所」です。
ーー新規事業ならではの悩みや壁はありましたか?
当初は、事業部長と私、若手社員、オペレーターなど5名ほどの小さな体制でスタートしました。社内にはメディア運営に強いマーケターは多くいますが、リード獲得に直結するノウハウを持つ人材は不在だったため、その部分は外部企業の協力を得ながら進めていたんです。ただ、そこで課題も見えてきました。
「All About家計相談所」は金融の領域に関わるサービスですので、特有のルールや事業ドメインについて、深く理解していただく必要がありました。ただ、外部企業に依頼する場合、インプットに十分な時間を確保していただくのは難しいこともあります。既存の仕組みが整っているプロジェクトであれば問題ありませんが、新規事業ではそうはいかず、成果が出づらかったり、調整に工夫が必要になったり、試行錯誤する場面が続いていました。
こうした経験から、次第に「外部発注のみでは、根本的な課題解決に限界があるのではないか」と考えるようになりました。
新規事業に求めたスピード感と柔軟性
ーー外部企業とのやり取りに難しさを感じるなか、フリーランス人材に目を向けた理由は何でしたか?
事業の拡大に向けていくつか構想はありましたが、その道筋が本当に正しいか、当時はまだ確信が持てない状況でした。そのため、まずは短期間で小さなチームを組成して、仮説をスピーディに検証したいと考えていました。
正社員採用の場合、選考に時間がかかる上、業務量が不確定な段階でフルタイムのポジションを設けるのは事業的な負担が大きいという懸念があります。その点、フリーランスの方々は結果にコミットするマインドを持ち、その実現に必要な専門性やスキルも備えています。計画通りに進まない状況でも柔軟にピボットしながら成果を出せる方が多く、そうしたスピード感と専門性が、いまの私たちのフェーズに最適だと考えました。
ーー実際にフリーランス人材を採用する際、Workshipのどんな点が魅力でしたか?
とくに魅力を感じたのは、美しいユーザーインターフェースでフリーランスの情報が見やすく整理されていて、スキルや経歴を比較しやすかったことです。
求人サービスは3〜5社ほど比較しましたが、その多くは、どんな方が登録しているのか、実際に紹介を受けるまでわからない“ブラインド状態”がほとんどです。一方、Workshipはプロフィールやスキルを自由に検索できるため、最初からミスマッチの不安なくフリーランスを探せました。
さらに、Workshipでは求人を掲載できるだけでなく、担当者の方が無料で推薦理由を添えて候補者を紹介してくれる仕組みもあります。一般的な人材紹介サービスでは、何十万、場合によっては数百万円かかるケースも少なくありませんよね。正直なところ、「追加費用なしでここまでサポートしていただけるのか」と驚きました。
プラットフォームの利便性とエージェントのようなサポートが両立しているのが心強かったです。
ーー採用活動は順調に進んだのでしょうか?
採用の方向性が定まらず、迷走した時期もありました。Workshipを通じてWebデザイナーの候補者と8名ほど面談しましたが、比較対象が多くなり、選考基準があいまいになってしまい、誰を選ぶべきか迷いが生じてしまったんです。
そのときには、担当者の方から「求人の初期段階では、もう少し要件を絞りましょう」とアドバイスをいただきました。候補者の絞り込みにより、効率的に検討できるようになり、採用方針も改めて整理できました。現在は、Webデザイナーに加え、広告運用に強いマーケターとMAやCRMに強みのあるマーケターの、3名の方にご活躍いただいています。
行動を後押しするメディアへ
ーー実際にフリーランスの方を採用して、どのような成果がありましたか?
事業の立ち上げ期に感じていた課題は、ほぼ解消できました。フリーランスの方々は単なる作業者ではなく、企画段階から関わる「ボードメンバー」の一員のような存在として伴走してくれています。協力会社との打ち合わせにも同席いただいており、当初想定していた150%以上の熱量と成果を感じています。
密に連携できるようになったことで、スピーディにPDCAを回せるようになりました。たとえうまくいかない施策があっても、その過程が学びとして残り、次の挑戦に生かせます。失敗のなかにこそ小さな成功の芽が見えることもあり、それを積み重ねて成果につなげていけるようになったと実感しています。
ーー自社に合うフリーランスの見極め方を教えてください。
私たちが重視したのは、類似事業の経験があるかどうかです。私たちの場合、「お金に関する事業の広告運用経験があるか」「私たちのサービスとトンマナが近いデザインに携わったことがあるか」といった具体的な経験を重視しました。
その意味では、マインド面といった抽象的な適性よりも、事業との親和性を経験値から見極めることがコツかもしれません。
ーーWorkshipはどんな企業におすすめしたいですか?
歴史のある企業、とくに社内の常識や既存のカルチャーが挑戦の壁になっていると感じる企業におすすめしたいです。
新しい人材を正社員で採用するのは、予算や文化面でハードルを感じるケースも少なくありません。だからこそ、まずはWorkshipを通じて瞬間風速的にフリーランスの力を借り、事業や組織に“風穴”をあけてみる。この一歩が、次の変化につながるかもしれません。
また、新規事業に挑む企業とも相性が良いと感じます。少しおおげさですが、立ち上げ期の事業は、サッカー日本代表が大会ごとに調子の良い選手を集め、短期集中で戦う姿に近いと思っているんです。限られた時間で最高のパフォーマンスを発揮し成果に直結させる側面は、フリーランスの即戦力性とも重なる部分だと感じています。
ーー最後に、オールアバウト様の展望を教えてください。
「All About」はいま、“知らなくて損することをなくす”メディアから、“行動せずに損することをなくす”メディアへと進化する変革期にいます。
今回お話しした「All About家計相談所」は、その取り組みの一つです。今後も事業の成長にあわせてフリーランスの力を取り入れながら、ユーザーの行動に寄り添えるサービスを育てていきます。